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2023年11月

見学者の目線

こんにちは。やさしさビタミンブログの工藤昭子です。
一雨ごとに寒くなり、ようやく冬化粧です。

先日埼玉にある、緩和ケアの病院の幹部の方が病院見学にいらっしゃいました。この方たちは実は2回目の見学です。1回目は今年の4月にいらっしゃったのですが「その時はただただ圧倒されてしまって、細かいところをよく見てなかった」そうなのです。そして自院の新築移転の話が進むにつれて「もう一度みたい」と思うようになったのだとか。うれしいことです。

私達も新築計画が始まったころから、いくつもの病院を見学に行きました。工夫したところ、どうしてもこれだけは叶えたかったこと、逆に思ったようにできなかったこと。いろいろありますよね。予算もありますから。

家も3回建てるとようやく自分の思い通りになる、というくらいですから、ましてや人生で1度くらいでしょうか、自分の勤め先の新築に関わるなんて。こんな機会めったに当たらないですよね。

さあ、ご挨拶もそこそこに早速病棟へ参ります。廊下の広さ、ナースステーションの作り、手すりの形状や消火器が収納されていることなど、熱心に写真を撮っていらっしゃいました。

患者さんが使う床頭台(しょうとうだい、と言います)は当院オリジナル。全体の高さ・収納力・マグネット板・明かり取りのアクリル板・鍵の形状など私たちの想いがいっぱい詰まっています。

廊下の端のちょっとした「遊び」のスペースなども気にいっていただきました。

以前「汚物処理室」と呼んでいた場所は「洗浄室」というネーミングにしたのです。
病室から出たとき目の前のドアに「汚物処理室」って書いてあったら、患者さんが気分を悪くするんじゃないか?という師長の発想から、この名前に変えたのです。実際便器を洗浄する場所ですし。

その話をすると「たしかに、汚物と書かれているとすでに汚れた場所という印象があるから、汚れてもいいんだという気持ちになるけれど、洗浄室と書かれていたら、きれいに使おうという気持ちになりますね」と言われて、その視点はなかったなと思いました。まさに言霊。

お話を聞いていて一番私が気づいてなくて、そして嬉しかったのは「この病院はにおいがしないですね。これは前回もそう感じました。換気システムは何を使っているのでしょうか?」という質問でした。言われてみると、旧病院の時は、そこはかとなく排泄物や人間の身体から発するにおいが感じられました。でも今はそうですね、ほとんど感じられなくなりました。換気システムはもちろんのこと、お掃除が行き届いていること、ゴミはすぐに処理すること、オムツの性能が上がり、職員の技術も向上したこと、などいろいろ理由があるのではないかなあ。こういうことをみえる化できるといいですね。

この数年病院の建て替え工事があちこちで行われています。どの病院にも「ここだけは!」という思いを込めた場所があるのだろうなあと思います。こんな風に外からいらした方の目線を通じて、気づかせていただきました。ありがとうございました。

今日もこのブログに来ていただきありがとうございます。
新しい病院ができたらぜひ!見学させてください。

推し活?

こんにちは。やさしさビタミンブログの工藤昭子です。

朝礼の3分スピーチで職員が語るのは、趣味や休日の過ごし方、家族との愉快なやりとりです。その人の人柄がわかり、意外性を発見したりするので面白く聞いています。

趣味と言えるのかどうか、映画はずっと好きなことの一つです。

コロナ禍はネットで見ていましたが、このごろは月イチ映画館で観るようになりました。真っ暗な中、映画だけに集中する没入感が、とてもいいのです。

今年は邦画「ある男」から始まって、最近観た「月」まですでに9本。なかなかいいペースです。

私は磯村勇斗さんに注目していて、彼の出る映画やドラマをチェックしています。
なんでも「こんな役を引き受けたらまともな役が来なくなるんじゃない?」というような役をあえて受けているようなんです。つまり人があまりやりたくない役を敢えて受けるというか。

そうやってきっと幅広い役者さんに成長していくんだなあと楽しみにしています。

これって推し活ってやつでしょうか?

それからネットで観てよかったなと思ったのは「ぼけますからよろしくお願いします」とその続編「おかえりお母さん」です。

広島・呉市で高齢夫婦が暮らしています。一人娘は東京で仕事が忙しい。帰郷してみると、母の様子がおかしく、家事の段取りができなくなっている。洗濯機に洗濯物がたくさん詰め込まれていて、「どうしたのこれ?」と聞くと取り繕う。おそらく洗濯のやり方がわからなくなったのだろう。母は洗濯物を取り出し床にばらまいて、その上でふて寝してしまう。

一人娘は40年近く東京で暮らし、ドキュメンタリー制作の仕事をしています。両親の記録を撮るつもりで帰郷したときにカメラを向けました。カメラを通して母親の様子が変化しているのに気づき、やがてアルツハイマー型認知症と診断されました。そして進行していく様子を冷静に撮影し続けました。時に声を荒げたり、娘としての声が湿ったりするのも胸に迫ります。介護する父は95歳。耳が遠くなり、長い距離を歩けなくなったけれども、母に変わって家事を始めたり、ジムに行き筋トレをして母を支えようとします。その明るさと健気さに涙がほろり。

この映画を観ると、アルツハイマー型認知症の人の世界がどう変化していくのか理解しやすくなります。それから誰かが病気になると途端に、家族のバランスが崩れていくのがわかります。一人娘は仕事を辞めて介護のために帰郷しようかと悩む。しかし父は「介護はわしがやる。あんたはあんたの仕事をやりなさい」と拒む。さてあなたならどうする? 自分に指を向ける映画でもあります。

2019年に最初の映画ができて、2022年に続編ができたのですが、2本ともみてもらいたいです。

今日もこのブログに来ていただきありがとうございます。

さらに続編、できないかな。

ワクチン

こんにちは。やさしさビタミンブログの工藤昭子です。
11月も早半ばになりました。時の経つのは早いですね。

連休の土曜日に、外来でコロナワクチンの大規模接種を行いました。
小さな病院ですが、ワクチン接種のために約400人近くのかたからご予約いただきましたので、外来師長も腕まくりして、当日のオペレーションを考えていました。

当日の朝、私でも少しは役に立てるかと思い、ワクチンを注射器に詰める作業を手伝いました。

「詰め方は〇〇さんが指導しますので、よく聞いてください」
パートのベテランナースが来て、注意点を説明しながら見本を示してくれました。かっこいいなあ。私を含めて8人の看護師がそれを見て作業を始めました。1本の小さなバイアル(ガラス瓶)から0.3mlずつ静かに吸い上げる作業。こういうの、大好きです。みなさん微妙なお年頃なので、0.3のメモリに目を凝らしながら、6本ずつ詰めていきます。いやあ、楽しい楽しい。詰め終わるとダブルチェックしてもらって、完了。その間にも受け付けは始まり、診察・注射・観察が粛々と行われていました。

外来というところ、看護師が患者さんに接する時間はほんのわずかです。でも患者さんはカレンダーに日時を書いたりして、準備しながらその日を迎えて来ます。
「しばらくでしたね。体調いかがでしたか」とか「お父さんはどうしてますか」など気遣いながら、次回また来る時まで、お大事にねと見送ります。

ポツン、ポツンと外来を訪れる点を結んで一本の線になる。その線がつらいことなく結ばれますように。来るのが難しければ、医師が家まで行きますよ。そんなことを伝えるのも外来の役目です。

その昔外来で師長をやっていた時、ある看護師が「外来に看護はない」と言って辞めていきました。そんなことはない。その瞬間、瞬間にも看護はあるんだと反論したかったけれど、うまく言えなくてあきらめた覚えがあります。

患者さんの診察や検査がスムーズにいくようにサポートすることや、急に具合が悪くなったときには素早く受け入れて対応すること、患者さんの気持ちや感情に配慮すること、病状が正しく理解できるよう手助けすること、そしてできるだけ家で過ごせるようにサポートすること。

ほら、今ならいっぱい言えるんだけどな。
たぶん彼女のしてきたことを「これは立派な看護だよ」と認めることができてなかったのでしょう。

そんな悔しさも思い出した土曜日でした。
今日もこのブログに来ていただきありがとうございます。
やっぱり現場っていいな!

ジャングルジム

こんにちは。やさしさビタミンブログの工藤昭子です。

雪虫にぶつからないよう、気をつけて歩く毎日です。
今週はいよいよ初雪が降るとやら。

机を整理していたら少し前の「医学界新聞」が出てきました。私はこの薄い新聞(全部で8ページ)の井部俊子さん(株式会社井部看護管理研究所・聖路加国際大学名誉教授)のコラムが大好きです。

「キャリアははしご(ラダー)ではなくジャングルジム」と書いた中にこんな文章がありました。

少し引用しますね。

「はしごには広がりがない。上るか下りるか、とどまるか出ていくかどちらかしかないのである。しかしジャングルジムにはもっと自由な回り道の余地がある。(中略)しばらく仕事を離れてから復帰するときも、さまざまな道を探すことができる。ときに下がったり、迂回したり、行き詰ったりしながら自分なりの道を進んでいけるなら、最終目的地に到達する確率は高まるに違いない。しかもジャングルジムなら、てっぺんにいる人だけでなく、大勢がすてきな眺望を手に入れられる。はしごだと、上の人のお尻しか見られないだろう」(2023年10月23日週刊医学界新聞 第3538号)

この「ジャングルジム」の表現に膝を打ちました。

そうそう、そうなんです。そもそも看護師になる道もいろいろある。たまたま配属された部署で花咲く人もいれば、転職してようやく自分のやりたいことに出会う人もいる。専門性を極めていく人もいれば、結婚や子育てで一旦キャリアを中断される人もいる。100人いたら100通りの人生がある。

止まっていたとしても、上っていた途中の、そこから始めればいい。
はしごじゃないんだよな! ああ腑に落ちた!

回り道をしてきた人に、私は関心があります。
うちの院長もその一人で、サラリーマンをしてから医学部に入りなおし、医師になった人です。回り道をしたことで「普通の人の感覚」を持ち続けているように私は思います。つましい生活の中で必死に暮らす人の、困りごとを放っておけない姿勢は、職員にも影響を与えていると感じます。
もし院長がストレートで医学部に入っていたとしても、けしてエリート風を吹かせるような人ではありません。
ただうまく言えませんが、きっと遠回りすることが必然だった気がします。

なんだか偉そうに聞こえますけど、尊敬しておりますですよ(^^ゞ

今何かの理由でジャングルジムの途中に座り込んでる人も、今そこから見える眺めを味わってほしい。そしてゆっくり見渡してほしい。
あなたを思い、支えてくれている人がいることを。

今日もこのブログに来ていただきありがとうございます。
かつての自分へ。