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2020年5月

名もなきケア

お昼ご飯を終えて自室に戻る階段を登っていたら、ソーシャルワーカーさんが手にいっぱいのティッシュを持って歩いていました。
スーパーで売っているような、5箱パックの塊を、3~4個抱えて病棟の入り口を四苦八苦して通ろうとしています。
「どうしたの?そんなに持って」と声をかけると
「〇〇さんのを買ってきました。よく痰が出る方なので。売店でも買えるんですが、1個ずつだと割高になるから・・・」と言いながら病室へと消えていきました。

少し説明すると、〇〇さんは入院患者さんで、ティッシュのような身の回り品を買ってきてくださる方が身近にいらっしゃらないのです。そのような場合、通常ですと院内にある売店で購入していただくのですが、この方に関しては、担当ソーシャルワーカーが経済状態や普段どのくらい使われるのかを考えて、時折まとめ買いに出向いていたというわけです。

誰がやってもいいんだけど、誰もやらないようなこと。
でも療養生活を続けていくのに必要なこと。

最近話題の「名もなき家事」という本、ご存じでしょうか。
家事の中にも「掃除・洗濯・調理」などに分類されないような、小さなものごとがあります。
例えばトイレットペーパーが切れて新しいものを付け替えるとか、コショウの瓶が空になって、詰め替え用を入れるとか、タッパーの相方をそろえておくとか。
日常生活を営むと言うのはいわば名もなき家事の積み重ねで、家庭の主婦が倒れたときに家族があたふたするのは、この名もなき家事に改めて気づくからなんですね。

こうした小さいけれども大切な家事を、気づいて言語化していくのが面白いと評判になり、SNSでも投稿されてて「なるほど~!」と思います。

冒頭のソーシャルワーカーさんの行動も、いわば「名もなきケア」とでも言いましょうか。
「ティッシュがなかったらお困りでしょう。そしてできれば安く買えた方がいいですよね」
という、私心のない利他性と言ったらいいのか、いずれにしてもこの行為のおかげで看護師もまた、助けられていたことに気づいたのです。

今日もこのブログに来ていただきありがとうございます。
気が利く人ってのは、名もなき・・の引き出しをいっぱい持っている人だな。

コーシーの日

毎年春に、ボランティアさんの感謝の集いというのを開いているのですが、今年はコロナウイルスの影響で中止になりました。
感謝の集いというのは、日ごろ患者さんや病院のために立ち働いてくださるボランティアさんに、感謝の気持ちをお返ししよう、ということで病院幹部や師長さんと一年を振り返りお茶とケーキでする懇談会のことです。
昨年は会場も狭い場所しか取れず、今見ると超3密!と気を揉むような景色です 笑。

今年はそれに代わる何かができないかな~とホスピス師長とボランティアコーディネーター鈴木さんと一緒に考えました。
そしてボランティア活動の写真をアルバムのように作成し、病院の職員からのメッセージを添えて送ってはどうか、ということで決まりました。
日々撮りためている日常風景の写真がこういう時に役に立ちます。

現在のボランティア活動は、患者さんに直接交わらないことだけ細々と継続しています。
その中でも手作りマスクの製作は多くの方に喜んでいただきました。
最初はボランティアさんたち自身のために作り始めたマスクでしたが、患者さんの中には外に買いに行くことができない方もたくさんいらっしゃったので、材料費実費で手売りしてとても喜ばれました。それがボランティアさんには励みになり、さらに改良版が次々と作られていきました。
最新は東京都知事の「百合子マスク」経産省大臣の「西村マスク」というものです。

それから連休中の5月4日。
ふと思いついて「コーシーの日」と勝手に名付けた日の午後3時。
ボランティアさんたちがそれぞれのご自宅で、一緒にコーヒーを飲んで気持ちを一つにしましょうと呼び掛け、初めてのzoom会を開催しました。
2,3名集まれるかしら・・・と思っていたら、なんと職員も合わせて13名!
zoomの接続をご家族に手伝っていただき「リモート飲み会にあこがれていました」という方もいて、可能性の広がりを感じました。
音楽療法士の先生も参加し、ピアノをその場で弾いて合唱したりして楽しい時間を過ごしました。
ZoomはできないけれどLINEから、同じ時間コーヒーを準備しましたよ、という写真が届いたり、わざわざお葉書を送ってくださった方もいて、温かい気持ちの溢れる日となりました。

今日もこのブログに来ていただきありがとうございます。
新たな可能性の発見。

軒花の桜

札幌で桜を見るのはだいたい5月の連休頃。
ホスピスでは病院から車で2キロほどの「平岡樹芸センター」というところへ毎年出かけ、お花見をしていました。
患者さんとご家族を病院車で送迎し、職員とボランティア総勢40人くらいの一大イベントです。
送迎プランからおやつの手配までなかなか楽しい行事でして、私も1同乗者として付き添うのを楽しみにしていました。

残念ながら今年はコロナウイルスの影響で中止となりました。
何かそれに代わるものはできないかな~と頭をひねったボランティア・コーディネーターの鈴木さんです。
4月25日、ホスピスの廊下に桜のアーケードができました。
竹ひごに桜の花をひとつひとつ手作りでくっつけて、それを間接照明の壁板に画びょうで固定してあります。
10mほどの廊下を通してみるとまるで桜の並木道です。

患者さんやご家族が「うわ~」と言って写真を撮っていらっしゃいました。

これ「軒花(のきばな)」と言うんですって。
お祭りの時期に軒花を商店街や民家の軒先に飾って、お神輿の通り道として目印にしたそうなんです。それをヒントに作ってくれました。

よろずの神々の通り道と考えるのは大げさでしょうか。
すべての人に温かい心が降り注ぐ、そんな並木道です。

今日もこのブログに来ていただきありがとうございます。
人を想い、喜びをもたらすボランティアさんの働きに心から感謝です。