2020年11月
わたしも、欲が出ました
ヨシタケシンスケさんのエッセイに「欲が出ました」という本があります。
人があまり気が付かないようなところを掘り下げた文章とかわいいイラストで、ついクスっと笑ってしまう本です。
今日はその題名にあやかって、書いてみます。
もう3年以上も前になりますが、私どもの病院で「認知症対応カンフォータブル・ケア」を取り入れました。
過去のブログにもその経緯を何度か書いたのですが、このたびその取り組みが「精神科看護」という雑誌に掲載されました。
呼びかけてくれた棟方師長さんと、看護管理者の私にそれぞれ書いてほしいというご依頼、ありがたくお受けしました。
頼まれごとは試されごとですものね。
そして軽い打ち合わせだけでお互い書きだしたのですが、結果的には同じことを違う視点から書いた形になりました。
実践したことってこうなっちゃうんですね。
3年間を総まとめという感じで、out putしてすっきりした私たちです。
カンフォータブル・ケアというのは、認知症の方に対して「快」の刺激による対応を心がけることと、相手に敬意を払い温かく接することを中心としています。
看護職者は環境の一部なので、これが常にキープできるように、そして劣化しないようにこれからも気をつけていきたい、と思っています。
当院は緩和ケアを前面に出しているのですが、私は高齢者医療の場としても質のよいケアをしている病院だ、と認知されたいのです。
自分の中だけでそう思っていても、言葉で表していかないと人には伝わらない。
何をもってそう表せるだろうか。
独自性を出すにはどうしたらいいのだろうか。
てなことを、連休中は家にこもって考えておりました。
今日もこのブログに来ていただきありがとうございます。
「自分の親を預けたいと思う病院」だよなあ。
頭をやわらかく
先日法人グループの中で業務改善発表会が行われました。
毎年札幌と仙台を交互に行き来して開催したのを、今年はオンラインで開催することになりました。
11施設からの発表はどれも現場の困りごとを題材にしていて、興味深いものがありました。当院からは患者さんの排便について薬に頼らず自然の力を使うテーマで発表されました。
業務改善発表会とは、いま起きている現象を違う視点から捉えなおし、データを活用して分析し、改良した結果どうだったのかを表すものです。
日ごろ臨床で働いていると、ルーティンワーク的な業務に慣らされてしまい「そもそもこれってなんのためにするんだっけ?」ということを考えずに、いわば思考停止のまま何年も過ぎてしまうことがあります。
先週のブログでご紹介したような「POOマスター」も、カチカチに固まった私たちの思考をほぐしてくれるものでした。
本来の患者さんの体が持つ力を引き出そうよ、そうすると患者さんも看護師もハッピーだよ、という至極当たり前の結果をもたらすのです。
その日の発表会で1位に選ばれたのは、看護師の前残業(始業前に早く来て先に残業すること)を減らすことに取り組んだものでした。
今日の受け持ち患者さんの情報を早く収集して、スタンバイしておきたい。
それは真面目な看護師たちに受け継がれてきた習慣で、働くスタイルだったりします。
先輩が早く出勤しているのに自分があとから来るなんて、という気持ちも働くかも知れません。
けれどもそのために前残業が習慣化するのはよくないのではないか、と主任たちは考えました。
これも「スタート時間をちょっとずらす」だけでずいぶん効果が出たという結論でしたが、「ちょっとずらす」ことを論理的に説明して、上と下に納得してもらうエネルギーが、相当必要だったろうな~と想像します。
「こうあらねば」とか「いままでずっとこうやってきた」とかいう声も聴きつつ、頭をやわらかくして業務を改良していく。
無駄な時間が減った分、患者さんのベッドサイドに行く時間が増えて、患者さんをどれだけハッピーにしたのか。
そう考えるとテーマは無限にありますね。
今日もこのブログに来ていただきありがとうございます。
だからいろんな本を読み、人と対話するのが役に立つんだな。
人を幸せにするケア・POOマスターが2人誕生!
お食事しながらこのブログを開いた方にはごめんなさい。
今日は「便」がテーマのお話です。
石川県で保健師をしている榊原千秋さんと出会ったのは2年前。とある講演会の後の懇親会で、私はたまたま榊原さんの真向かいに座りました。
初対面だったので、お互いの仕事を自己紹介したときに、榊原さんが排便ケアのPOOマスターという取り組みをしていると教えていただきました。
病院や施設にいる高齢者の多くは排便がスムーズではなく、下剤を服用したり、3、4日便が出なければ浣腸をかけて出しています。
私も長年看護師をしていて便を柔らかくする薬と、腸の蠕動を促す薬を調節するのが当たり前と考えてきたのですが、薬に頼ると量が増えていきますし、その人の持つ排泄の力が失われてしまうのだそうです。
排便のメカニズムやその人の排便習慣を観察して、適切なケアを提供できると、気持ちよく出すことができる。
すっきりすると自然と食欲が湧き、元気になっていくもの。
その力を取り戻すために「POOマスター」(POOは“うんち“の意味)という講座を立ち上げ、全国で指導されていたのが、榊原さんだったのです。
私はお話にぐいぐい引き込まれました。
便秘と下痢を繰り返したり、おむつで排泄される方が看護師のケアで「気持ちよく」排泄できたら、どんなにいいでしょう。排泄は人間の尊厳にかかわることですし、できるなら人の手を介さず、自然にすっきりしたいものです。
「工藤さん、札幌で講座を開くときはきっとスタッフを来させてね。スタッフも元気になる講座だから」とにっこり笑っておっしゃったので「はい、わかりました」と即答しました。
このキラキラしたオーラは只者ではない。
実践に裏打ちされた自信と誇りに満ちている。
私はアンテナがピンと立って「絶対スタッフを出そう」と心に決めていたのです。
そして2020年。
当院から2名のナースが無事この講座を修了しました。
こういう時は関心のある人が行くのが一番です。
POOマスター講座は、単なる座学と違い、学んだことを実践して次の回を迎えるようなプログラムになっています。
当然「自分だったらどうやってこのことをみんなに伝えようか」と能動的な受講になるでしょう。
副主任Oさんの講義は、榊原さんが乗り移ったような迫力がありました。
そのあと日をあけて2度目の講座の後は患者さんの排便日誌をつけて、それに合ったケアを提供するという宿題でした。
詳しいことは割愛しますけれども、はっきり申しますね。
これは確実に患者さんを幸せにするケアです。
二人の受け持ち患者さんが教えてくださいました。
「やや硬めのいいうんこがすっきりと出て気持ち良かった」と。
健康な人にとっては当たり前の言葉ですが、これは私たちにとって、とても価値ある言葉なんです。
そして彼女たちの看護記録が明らかに変わりました。
お見せできないのが残念ですけど、排泄ケアのプロフェッショナルの記録です。
いろんなケアのプロがいて、だんだん高齢者ケアがアップしていく。
患者さんが喜んでくださると看護師も喜び、もっとよくしてあげたいと思う。
ご縁が結んでくれたケアに感謝です。
今日もこのブログに来ていただきありがとうございます。
POOマスターについてご興味のある方はこちら↓
新たな「こもれびの会(慰霊祭)」の様式
当院では毎年秋に「こもれびの会」という慰霊祭を行っています。
当院で旅立たれた患者様のご遺族をお呼びして、院内で慰霊を行う式典です。
毎年40名くらいの方が集って下さり、職員の顔を見て懐かしんでいただいたり、近況を教えていただいたりします。
いつもなら黙とうの後、院長から「悲嘆について」のお話や、ピアノとフルートの生演奏を聴いていただき、祭壇に献花をして厳かに行われていました。
今年はコロナウイルスの感染拡大のため、ご遺族をお呼びするのはあきらめ、その代り職員だけで慰霊祭を開こうということになりました。
そこにご遺族がいらっしゃるようにして、前野総長、臨床宗教師の米本智昭さんのお話が続きました。
そして今年は献花に新しいアイデアが生まれました。
これまでは祭壇の上に一人一輪の白いカーネーションを置く形でしたが、今年は祭壇に4つの花器を用意し、一人一輪の花をそこに挿してみんなでアレンジメントを作り上げる、というものです。
当日勤務していた100名ほどの職員が、仕事の合間に会場を訪れて参加しました。
このアイデア、園芸療法士としてボランティアに来てくださっている、Tさんにご協力いただきました。
花の選択から、ふさわしい花器の準備、花の挿し方まで教えていただき、最後に手直しをして美しく彩りのやさしいアレンジメントが4つ完成したのです。
出来上がったものは、外来受付と各病棟に飾られました。
この様子は後日ひだまりブログでもお知らせする予定です。
今日もこのブログに来ていただき、ありがとうございます。
これもひとつの新しい様式です。
札幌南徳洲会病院の緩和ケアで働きませんか?
今日は看護職員募集のご案内です。
いつもブログを読んで下さっている方には「あれれ?」の内容かも知れません。
でも大事なことなので書かせていただきますね。
おかげさまで当院は来年7月に新築移転に向けて着々と準備を進めております。
そこで今は来春の募集とともに、年初めから働く人を若干名募集しております。
現在緩和ケア病棟は1つ(18床)ですが、移転後は2つ(20床×2)になります。
2021年度は引っ越しもあり、新しい環境になるので少々忙しくなると思っています。
その忙しさを一緒にワイワイしてくれる方が嬉しいです。
来てくれた方と和やかで温かいチームを作り、よいケアを継続するためにどうしていけばいいか、一緒に考えていけたらいいなあと思います。
私たちはなにより、最期までその人らしく生きることを大切にしています。
そしてご家族のことも丸ごと考えるようにしています。
私たちのケアがその人にとってよかったのかどうか、患者さんに教えていただき、それをふりかえっては考える、を繰り返しています。
そのため日頃から臨床心理士や音楽療法士、臨床宗教師などの専門家も交えて話し合いをしています。
それからボランティアさんのチカラも借りて、ふだんの暮らしやこころからのおもてなしにできるだけ近づくようにしたいと思っています。
こういう価値観に共鳴し、一緒にやってみたいと思う人を仲間にお迎えしたい、それが私たちの願いです。
今現在募集しているのは
看護師さんと看護補助者さん。
2021年1月からと4月からのふたつの時期で募集しています。
説明会は11/7(土)と12/19(土)行います。
詳しくは採用のページをご覧いただき、お問い合わせください。
https://sapporominami.com/nurse/careers/
ご応募、お待ちしております。
今日もこのブログ(?)に来ていただきありがとうございます。
たまには看護部長らしいことも。