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認知症

認知症カンフォータブルケア研修生を受け入れました!

認知症対応カンフォータブル・ケアを始めて2年が経ちました。
実践はスタッフの中に浸透してきたと感じたので、今年は次のステップとして、他の病院から研修生を受け入れる、ということを計画しました。

以前このブログでご紹介したように、法人グループには「ベストプラクティス研修」といって、自院では学べないが他病院で学ぶことのできる研修の仕組みがあります。
これに手あげをしたのが4月。
果たして研修に来てくれる人はいるのかな〜〜と思ったら、なんと大阪と石垣島から応募がありました。

これはうれしい!がぜんはりきる私たちです。
日頃実践していることを見てもらうには言語化が必要です。
大まかなスケジュールは私の方で立てましたが、研修生をお迎えするのは現場です。
丁度前の週に千葉の病院で自らベストプラクティス研修を受けてきた師長さんが、
「今度は私がしっかりとおもてなししますね!」とたのもしいことを言ってくれました。
研修中は私もウロウロして柱の影からそっと見守りました。
やってみてよ〜くわかったのは、現場スタッフの一人一人が日々のケアでよくやってくれていること。それを生き生きと伝えていることでした。

5日間の研修を終えて「職場の雰囲気がどこも温かくて、カンファレンスではみなさんが自由に発言していてびっくりしました。自分のいる場所で取り入れるとしたら、まずは敬語、言葉づかいだなと思います」
という感想をいただき嬉しく思います。

一方、人に見ていただくということは、自らを振り返る機会にもなります。
みんなが善きオーラに満ちて、いい緊張感を感じました。
肯定されることでますますみんなのモチベーションが上がったことと思います。
研修に来てくださってありがとう。

今日もこのブログに来ていただきありがとうございます????
うちのブランドになるといいなあ!

認知症相談窓口をはじめます!

認知症の始まりはささやかな違和感で、それに気づくのはたいがいご家族です。

お父さん、最近様子が変なんだよね。
少しぼんやりするようになったっていうか。
話しかけてもすぐに返事が返ってこない。
耳が遠くなったのかな。
同じ話を繰り返すんだよね、初めて話すみたいに。

この間も車を擦って帰ってきたの。
そのことを聞くと、あわててごまかそうとするの。
大丈夫かな、運転。

認知症患者は全国で500万人を超え、2025年には高齢者の5人に一人、700万人を超えると言われています。
昨年から当院で始めた医療講演ですが「認知症」の関心が高いことがわかりました。
今年は3回シリーズで、医師・看護師・ケアマネージャーが講演をしておりますが、来られた方はそれぞれ個別のお悩みを持っているため、講演と質疑応答だけでは十分お答えできないことがわかってきました。

そこでこの9月から「認知症相談窓口」を開設することになりました。

日常生活の中で「あれ?」と思う小さな兆し。
診察を受けるべきかどうか?
どうやって診察に連れてくればいいのか?
など、お悩みをご相談ください。

介護施設にお勤めの方のご相談も承ります。

毎週金曜の午後。
あらかじめお電話で予約をいただき、時間を取ってお話を伺います。
お力になれるように一緒に考えていきたいと思っています。
ご相談は無料です。

電話011-883-0602 看護師の棟方までご連絡ください。

今日もこのブログに来てくださりありがとうございます。
できることを少しずつ。

再び・なぜカンフォータブルケアなのか?に答えます

週末は京都で開催された日本認知症ケア学会に参加してきました。2年前から取り組んできた認知症対応カンフォータブルケアについて、効果があったことを発表するためです。機能評価受審が迫る中、師長さん2人との共同研究は忙しい中でも楽しいものでした。
口演した病棟師長さんはとても緊張していましたが、練習の甲斐あって落ち着いた声でゆっくりと発表でき、見ていた私もホッとひと安心しました。

終わって質問が2、3ありました。
そのひとつに「どうして(他のケア技術ではなく)カンフォータブルケアを選んだのか?」という問いがありました。詳しくは過去のブログを読んで頂ければ幸いですけれども、振り返って考えるとこれはきっかけを作ってくれたM師長さんの直感だったと思います。

直感で決めた!カンフォータブル・ケア

職種に関係なくみんなで取り組める。
言葉がやさしく敷居が低い感じ。
当たり前のことばかりで難しいと感じない。
特別な道具や高い研修費がかからない。
そして南さんの「現場のケアを良くしたい」という情熱。
みんなでこれに取り組んだら、患者さんだけじゃなく自分達もポジティブに仕事ができるんじゃないか、と信じられる何か。

こんなところが小規模の当院に合っていたと直感したのです。
ただし南さんは「みんなで同じ思いで取り組まないとうまくいかない。誰かが、私はやらない、と言い出すと台無しになる。」とおっしゃってました。だから私達は全員にこの研修を受けてもらって、意義を理解し共感してもらうことからできるだけ丁寧に始めました。
患者さんに良いケアを提供して周辺症状が良くなっていく。
それが実感できたことで、スタッフはこのシンプルなものを、まっすぐ受け取ってくれたのだと思います。
この2年間私達はカンフォータブルケアに取り組んで、成果を実感しました。患者さんの笑顔が増えて、薬の量と行動制限が減りました。看護師の言葉は変化し介護福祉士達はイベントを提供して患者さんを喜ばせようと一所懸命やってくれています。

お金のない病院や施設ほど向いている

研修にお金をかけられない中小の病院や高齢者施設ほど、カンフォータブルケアは導入しやすいように思います。
南さんご自身は全国にこの取り組みを広めたい、現場をよくしたい、という一心で活動されてますから。

現場の様子を見たい!という方は是非見学にお越し下さい。
まだまだ発展途上ではありますが、何かを感じていただける程度にはなってると自負しています。

今日もこのブログに来ていただきありがとうございます。
どれが一番とか正しいとかでなく。

認知症の事例検討会が楽しく終了しました。

M男さんは、看護師がおむつを替えようとすると腕を振り回して怒り、体に触らせてくれませんでした。
ご自分が病院にいることもおそらく分かっておらず、治療の説明はまったく耳に届いていません。
気に入らないことがあるとすぐ怒り出して手元にあるものを投げつけ、目をぎらぎらとさせて飛び掛からんばかりに威嚇するので、看護師はほとほと手を焼いていました。
ただ怒りがエネルギーを消費するせいか、食事の食べっぷりは見事です。
お膳を置くかおかないうちに器に入っているものをひとつずつ空にしていきます。
ごはんつぶ一つ残さずきれいに完食。
M男さんは看護師から絶賛されて、この時だけは笑顔になったのです。

今ならこの認知症は「前頭側頭葉型認知症(ピック病)」だとわかるのですが、20年位前はそういう分類はなかったので、看護師に殴り掛かる手を数人で押さえつけ、抑制して点滴をし、おむつを取り替え、夜は薬で眠ってもらうことが当たり前でした。
体に起きている病気を治療するために、認知症が治療しづらくさせている側面があったのです。

今は認知症に対する対応の仕方も変わり、その人の生活環境を整えることで穏やかに過ごせるようになることがわかってきています。
ただ看護師だけではやっぱり情報も対応も足りないので、MSWから生活背景を教えてもらったり、看護補助者の方が生活習慣をよく知っていたりするので、それらの情報をまとめつつ、心地よかったことは何か、を探し続けていく必要があるのです。

先日行われた認知症事例検討会には、病院の向かいにある高齢者施設職員やケアマネージャーが参加してくれて、興味深い話し合いになりました。

お家では朝遅く起きるので、朝ご飯を食べないという人にとっては、病院の日課で朝早く起こされ、朝ご飯を強要されるのは不愉快なことでしょう。
当然、不機嫌になり食事は拒絶の態度につながります。
ごはんは一日2食でいいというなら、それでいいのです。
病院の看護師は病院の日課が身に沁みついていますので、3食食べていただくことが当たり前と思いがちです。
しかし看護師自身も休みの日に、ゆっくり朝寝坊して朝昼兼用のごはん、ということはよくあることです。
ここに「病院の中の正しい生活」と患者さんの日常のズレがあるのです。

よく「患者さんの気持ちを尊重して」ということが言われますが、「病院の中の正しい生活」という価値観を一度立ち止まって考える必要があるでしょう。
自分や家族の身に置き換えるとわかることも、多職種の意見を聴くことで、腑に落ちるものです。
大事なのは行ったケアを振り返って、もっといい対応はなかったか、その人に適切な環境だったかを問い続けることなのです。

今日もこのブログに来ていただきありがとうございます。
私が認知症になるのなら・・・と考えても仕方ないな。

カンフォータブル・ケアをやってよかった3つのこと

このブログにもたびたび登場していただいている、「カンフォータブル・ケア」の本がついに発売されました。

私たちは29年の春先に業界紙に載っていた著者の南敦司さんを知り、突撃電話で講義をお願いしました。
快く引き受けてくださってその年の9月に院内で職員向けに研修会を開いてもらって、カンフォータブル・ケアの可能性を感じました。

よかったこと1 誰でもすぐできる

パーソン・センタード・ケアもユマニチュードも手法に違いはありますが患者さんの問題を探すのではなくて、患者さんの持てる力を引き出し、しっかりと向き合うという点では共通しているものと思います。ただカンフォータブル・ケアは誰でも取り掛かりやすく、お金もかからず、道具もいらない。
私たちの意識と行動を変えることで認知症ケアが楽しく楽になる、患者さんもハッピーになると信じて、ただひたすら素直に実践してきました。

よかったこと2 同じ時間を楽しくするアクティビティ・ケア

その結果いくつかの副産物がありまして
たとえば「いちご狩り」というイベントをすると患者さんがとても喜んでくださる。
土に触れてその場でいちごを洗って食べる、というなにげないことで普段見ない笑顔を見ます。
その笑顔を見た職員は、ようし、もっとなにか喜んでもらえることはないかな?と思って、イベントを企画するようになる。これが日ごろの「何もすることのない時間」を「何か楽しいことがあるみたい」な時間に変えるんですね。
これが「アクティビティ・ケア」というものだと本を読んで改めてわかりました。

ベッドの上で土に触れる

イチゴが実る

よかったこと3 行動制限が減る!

それからこのケアをするようになって、行動を制限するようなことが減り、鎮静化するような薬の使用も減りました。
カンフォータブル・ケアとはこれらの複合的な作用もひっくるめたことだと本を読んで改めて認識したところです。
本には南さんが現在の病院に着任したころのことが赤裸々に書かれていますし、だからこそ今いるスタッフに信頼して任せている様子がわかります。
そして「あるある」な具体例が満載ですので、実践的な本になっています。

当院の看護師たちも「問題行動」に着目するのではなく、「どんなケアが効果的だったか」を話合うようになってきました。
この流れは清々しいものがあり、特に2つの障がい者病棟の師長たちにこの経過を語らせたら、二人とも自信をもってアツく語ります(笑)

今日もこのブログに来ていただきありがとうございます。
ぜひお手元に。

カンフォータブル・ケアは認知症緩和ケアだ

6月16日に今年度2回目の「カンフォータブル・ケア」の研修が終わりました。
昨年9月に病棟師長の発案で、お招きした南敦司さんの講義を聴いて、かなり衝撃を受けた私たちは、「ぜひこれは看護職員全員に聴いてもらいたい」と考えました。

それで今年度は2回、同じ研修をしてくださいと頼んで実現したのです。
院内の全職員や向いの関連施設、ボランティアさんにも呼びかけました。

私はこれで2回目の受講ですが、少し気持ちが薄れてた自分を反省したのと、前回聞いたのとはまた違う気づきが生まれました。
たとえば
「目線を合わせる」というところ。
昨年9月に講義を聴いて、私が日頃一番意識して行動していたのはここです。
病棟をラウンドするときに、デイルームに患者さんがいらっしゃると必ず声をかけることにしています。
「おはようございます。今日はいいお天気ですね」
「昨夜はよく眠れましたか?」
横や後ろから患者さんに声をかけてびっくりさせるのではなく、正面から目線を合わせて声をかける、という風に行動していました。
今回の講義では「目線を合わせて声をかけ、その言葉を相手が受け止めたかどうか、一拍置いて観察し次の行動へと促す」という流れが説明されました。
ここ、前回は聞き逃していたかも知れません。

「笑顔のギアをマックスに上げて!!」

また「関心を持つ」というところがまだまだ足りぬと思いました。
先日のエクスマ塾でも学びましたが、「小さい頃どんな子供だったのか」「若い時にどんな仕事をしていたのか」「好きな歌は何か」「故郷はどこか」など、もっともっと問いを投げかけて行こうと思いました。
一日たった5分でもそこにハートがあれば・・の精神です。

白衣の男性は主演男優賞!

研修後南さんと少しお話をさせていただいて、当院はホスピス緩和ケアがあるので、患者さんの尊厳を大事にする風潮はもともと根付いているでしょうとおっしゃっていただきましたが、
むしろ南さんのお話は、「認知症緩和ケア」とでもいうべき分野ではないかと、帰る道々思ったものです。

さて、研修を受けただけで満足せず、維持継続していかなければ!
昨年講義を聴いたあとに師長たちが自ら行動し、当院の認知症患者さんへのケアはずいぶん変化してきました。
他院から「大声を出して暴れるので困っていた」という患者さんも、当院に入院後は数日で落ち着いて、「一体以前は何が問題だったの?」ということが見受けられるようになりました。
また怒りモードが収まらない患者さんに対して、夜勤看護師がひたすら謝り姿勢で接してくれたおかげで、患者さんの状態が落ち着いたということもありました。

こうして小さな成功体験を重ねて、ケアをアセスメントし、スタッフがお互いに質を高めていくくらいの、成熟したチームを目指したいものです。

きっかけはこの師長さんのひとこと

今日もこのブログに来ていただきありがとうございます。
患者さんにやさしい病院は職員にもいい病院。

再び認知症ケアの先生・南敦司さんをお迎えして

認知症というコトバが定着する一昔前までは、痴呆症と言われていました。
高齢の家族に痴呆症の人がいると、ご近所には知られたくない、家の外に出さないというような時代があり、
病院の中でも認知症の患者は言葉で抑えつけられたり、身体を縛られたり、薬で寝かせきりにさせられたりしていました。

今、当院では「カンフォータブル・ケア」という技術を取り入れて、患者さんが心穏やかに過ごせるようにしようとしています。
去年の9月にこの「カンフォータブル・ケア」を提唱している南敦司さんをお呼びして、研修会をしたのがきっかけです。
https://sapporominami.com/nurse/category/blog-c/dementia/

それはそれは楽しい研修でした。現場で起こる「あるある」な出来事を軸にして、南さんの話はとにかく面白い。(関西人だから、というのも多分あります)
ケアの10の原則を身振り手振りで説明してくださって、小さなグループワークがあって、まるで私たちの脳を活性化するかのように楽しくて引き込まれました。
研修の後、認知症の患者さんにこの技術を使ってみたい気持ちでわくわくしたのです。
ただ、その時は終業後の時間だったので、多くの人に聴いてもらうことが出来なかった。
それで今年は2回、同じ研修をしてたくさんの人に聴いてもらおうということになったのです。
師長さんたちには2回の研修にできるだけ多くの人を出してもらうようにお願いしました。
そして看護部だけじゃなく、病院全体にもできるだけ出てねとお願いしました。
今や南さんは全国区の講師なんです。めったにこんなチャンスは作れません。

当日は南さんに4時間たっぷりしゃべってもらって、約50人位の人が参加できました。
ボランティアさんや向いの施設職員にも呼びかけました。
次回も同じくらい出られたら、職員の2/3の人がこれを聴いたことになる。

10の原則のひとつひとつはそれほど難しいことじゃありません。
ひとりひとりが1つでも続けて実践してくれたらずいぶんいいことだと思います。
ひとつ習慣化したら次の原則を取り入れる。
そうして病院職員の2/3がこれを習慣化してくれたらもっとすごいことです。
研修ってのはそういう風に実践行動にしてくれるのを狙ってるんですよね。

今日もこのブログに来ていただきありがとうございます。
いい、と思うことを地道に続けよう。

今までのケアでいいのかな・・? 認知症ケア事例検討会開催!

先日院内で「認知症ケア事例検討会」が行われました。
院内全体では初の試み。企画者も手探りで準備し、当日を迎えました。
事前に病棟・外来・ケアマネージャーがそれぞれ「この対応でいいのだろうか?」と悩んでいた事例を整理してスライドを持ち寄りました。

当院「ふくじゅそう外来」(認知症外来)の担当医である田村先生が司会進行をしてくださり、ミニレクチャーを交えながら会は進みました。
事例の概要を発表した後、3つのグループに分かれました。
参加者は自分の興味のあるテーマの方へ座り、膝を突き合わせて互いの話に耳を傾けます。
看護師・ソーシャルワーカー・介護福祉士・ケアマネージャーらがそれぞれの立場から事例発表者への質問を投げかけて、一緒に考え、時間は短いながらも密度の濃い話し合いになりました。

認知症ケアには、共通する温かい対応を基本としながら、その人個人に対する個別の対応が求められます。
何が心地よかったか、何をしていたら笑顔になったのか、誰がどう対応したらきちんと薬が飲めたのか、ご家族の心がどうやったら安定するのか、うまく行ったことを共有して積み上げていくのが遠くて近い道です。
具体性は人によって違うため、自分たちで見つけて共有していくしかないのです。

話し合いを終えて「いままでやっていたケアでは十分ではないのでは?と感じて今日とりあげましたが、皆さんの話を聴いて、今のまま続けて行っていいんだと思うようになりました。」
と明るい笑顔で話した一人の発表者。
いろんな角度から意見をもらって、最後は肯定感で終わることができて良かったなあと思います。

今日もこのブログに来ていただきありがとうございます。
初めての試みって緊張するね。

カンフォータブルケアのその後

こんにちは。札幌南徳洲会病院の工藤です。
昨年から私たちの病院では認知症高齢者への「カンフォータブルケア」を取り入れることにしました。(その経緯はこちら↓)

認知症対応カンフォタブル・ケアに取り組みます

南さんの講義に感銘を受けた私たちは、師長たち6名で南さんの職場を実際に見学させていただきました。そこで朝と夕方のミーティングにカンフォータブルケアの秘訣があるということを知りました。

朝礼では今日患者さんに話しかけるコトバを一人のスタッフが発表します。
「今日はすっきりしたお天気ですね」というようなコトバを。
明るいフレーズを意識的に考えるそうです。
そのコトバを他のスタッフも復唱します。
そして二人ペアになって、笑顔の確認をするのです。

笑顔とコトバ。
この二つを明るくポジティブなものにして、働く側の姿勢を形作ってから患者さんのところへ飛び出て行きます。

患者さんの元へ行ったスタッフはそれぞれが「今日はすっきりしたお天気ですね」と声をかけます。認知症の患者さんはそのコトバを聞き、「ああ、今日はすっきりしたお天気なんだ」と思うでしょう。そこにいる方皆が同じコトバを聞き、忘れ、また別の人から聞く。声をかける人は笑顔。この繰り返しがすばらしいと感じました。

終礼では、「今日のいいこと」を発表し合います。
「今日は○○さんが昭和歌謡を歌って笑顔を見せてくれた」
「今日は△△さんがいつもより食欲があってうれしかった」
というようなことを。
これは「嫌な気持ちを(家に)持って帰らない」で、「忙しかったけどよくがんばった」という肯定的な気持ちで仕事を終えることが大事なんだと南さんは言いました。
「ああ、疲れた」とつぶやくと、聞いている周りの人も「ほんと疲れた」とテンションが下がるのです。

だから否定的な言葉ではなく、みんなよくやったね、そうだね、と互いをたたえ合って終わりにする。

これはすごくいい!

そこで私たちもこの朝礼と終礼を取り入れることにしました。
特に終礼では「今日良かったことを発表する」というのが定着してきました。
「今日はころびそうな人がたくさんいる中、誰ひとり転ばなかった。みんな頑張ったね」
「今日はひとり欠員がいたけど、みんなで協力してちゃんと終わったことに感謝します」

時には旅立たれた方のことを想い、しんみりと語り合うこともあります。

「今日のいいこと」は当番ではありません。
誰が当たるかわからないので、スタッフは心の中で今日のいいことを探しています。
「あ、今日はこれ言おう!」とネタを見つけた人はそのことを発表するのを実は意識して終礼を迎えるのです。

よいコトバを意識して発することが習慣になると、行動も変わる。

今日もこのブログに来ていただきありがとうございます。
私はワクワクしながら、そこのところに注目しています。

認知症対応カンフォタブル・ケアに取り組みます

少し前のことになりますが9月28日、旭山病院でご活躍中の南敦司師長さんをおよびして、「カンフォタブルケア」について研修会を開催しました。
この研修はある師長さんの発案で実現したもの。道内の医療系雑誌「ベストナース」に掲載された南さんの記事を読み、「この人の話が聴きたい」と言ってくれたのです。こういう発案ってとても大事です。

南さんは関西ご出身で、以前は向こうで病棟師長さんをされていました。
そこで働いていた時に、看護師の厳しい言動や対応によって認知症の患者さんのいわゆる「周辺症状」が引き起こされていることに気が付きました。周辺症状と言うのは、認知症患者さんが不快なことをコトバでうまく表現できないために、徘徊や介護の拒否・異食などで現れる症状のことです。
そこで南さんは認知症の病態生理を徹底的に看護師に教え、看護師の表情や態度を「快刺激」に変える指導を行ったところ、患者さんの周辺症状が落ち着き、穏やかに過ごせるようになったそうです。

そして看護チームの連帯感やコミュニケーションが非常によくなり、チームビルディングにも効果があることがわかったそうなのです。

札幌に移ってこられて、現在いらっしゃる病棟でも実行していったところ、やはり同じ効果が生まれ、患者さんが穏やかになり、看護師たちもイキイキとケアするようになってきました。患者さんによいケアをしていることが広まって、見学者やそこを目指して就職を希望する人が増えたのだそうです。

南さんの講義は身振り手振りを大きく表現するだけじゃなく、近くの人とワークショップも行うので、非常に具体的でわかりやすく、飽きさせません。特別なことは何もいらない。ただ私たち看護者の姿勢や態度を変えていくこと。その人の問題点ではなく、できること、好きなことを探して行動すること。その人を尊重し人生を肯定していくこと。
あら、これはホスピスだってどこだって一緒じゃないか!あったりまえのことじゃないか!
同じくはできてないけど、ウチの病院もかなりいい線行ってると思う。

そして南さんは北海道全体にこのケアを広げて、認知症患者さんが暮らしやすい世の中にしたいんだと公言しているので、なんだか聞いている私たちも、力をもらった気持ちになりました。

うれしいのは研修後にウチの師長さんたちが「あのケアをぜひやりましょう」と言ってくれたこと、そしてアンケートの回答にも前向きメッセージが一杯書かれていたことです。
うん、今がチャンス。南さん ありがとうございました!

今日もこのブログに来ていただきありがとうございます。
どの場所に来ても「ここへ来てよかった」と言われるように。

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