札幌南徳洲会病院看護部長 工藤昭子の やさしさビタミンブログ
慰霊祭「こもれび」2022
こんにちは。やさしさビタミンブログの工藤昭子です。
このブログでも何度か書いておりますが、
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今年も慰霊祭「こもれび」を行いました。
当院と、隣接しているホームケアクリニック札幌・緩和ケア訪問看護ステーション札幌で、お看取りをさせていただいた患者様を偲ぶ会を開きました。
2019年まではご遺族の方もお呼びして、一緒に祭壇に花を手向け思い出を語る機会としておりましたが、コロナ禍になってからは職員だけで執り行っています。
お知らせを受けてお花をお届けくださったご遺族の方へ、この場を借りてお礼を申し上げます。
黙とうのあと前野総長のご挨拶、臨床宗教師・米本さんのお話があり、講堂は厳かな雰囲気に包まれました。
死を前にして、医療者に何ができるのでしょうか。
「このケアでよかったでしょうか?」と尋ねたい相手はもうここにいません。
が、そう問い続けていくことは私たちの課題です。
AさんによかったケアがBさんにもいいとは限らない。
おひとりおひとり違う人格・違う人生・違う痛みを持っておられる。
私たちもいつか行く「あの世」で、その答えが聞けるといいなと思います。
「こもれび」では今年もボランティアのTさんのお力をお借りして、職員が献花した花をそれぞれオアシスに挿し、アレンジメントを作成しました。
最後の整えをTさんがしてくださり、涼やかな夏花アレンジメントが5台完成しました。ご来院の機会がありましたら、ぜひご覧ください。
今日もこのブログに来てくださりありがとうございます。
来年こそはご遺族の方もご一緒にできますように。
イチゴ狩り2022
こんにちは。やさしさビタミンブログの工藤昭子です。
北海道は夏の果物がこれからおいしい季節ですね。
イチゴ・さくらんぼ・ブルーベリー。
太陽をたっぷり浴びた路地物の果物を食べると、体が喜ぶ感じがしませんか?
病院では今年もいちご狩りをやりました。
去年までは旧病院の玄関横にいちご畑があったのですが、今年はプランターで作ったものを病棟内に運んで、ベッドサイドやデイルームでイチゴ狩り(狩り、というよりは摘み、の方がしっくりきます)をしました。
クラークさんが作ってくれたポスターが目にまぶしいっ!
ボランティアさん宅で収穫されたイチゴが別に用意されてまして、スタッフがワゴンサービスでお届けしました。
この日を楽しみにして、イチゴ狩りの夢まで見てくださった患者さんがいたり、昔農家だった患者さんは「これこれこの味!これが本物のイチゴの味だよ」と絶賛していただいたり。
105歳の方がもくもくと食べてくださったり。
自然の恵みと、ボランティアさんの愛情がいっぱい詰まったイチゴは、患者さんと職員を幸せにしたのでした。ありがとうございました!
今日もこのブログに来てくださりありがとうございます。
これこそ「ビタミン」ですね。
小さな願い
こんにちは。やさしさビタミンブログの工藤昭子です。
朝晩冷え込んでいた札幌も、ようやく夏の兆しです。
もうすぐ夏至。病院横シュヴァービングの森は緑が濃くなってきました。
風が緩やかに流れる午後、ベッドごと患者さんを外に連れ出しているスタッフの姿を見つけました。
花壇の花を見て、森を見て、正面玄関から戻ってきました。
「寒くありませんでしたか?」と声をかけたのですが、聞こえなかったようです。
ニセアカシアの枝を手折って、枕元に置いてありました。
病室に帰って行かれたあとには、廊下に花の香りが残りました。
別な日の病棟では、デイルームの小上がりがステージになっていました。
歌好きの患者さんのオンステージを叶えるために、スタッフが手作りで飾りつけをしています。
スタッフは観客になって応援の団扇やペンライトを振るんだそうです。
患者さん、気持ちよく歌えたでしょうか。
別な病棟では売店のワゴン販売が始まりました。
車いすやベッドで連れ出された患者さんが次々にお買い物を楽しんでいます。
「ちょっとちょっと~私も買いたいの~」と近くのお部屋から女性の声がします。
部屋を訪れると「私、チョコレートが好きなの。買ってきてくれる?」と小銭を手渡されました。
「はい、どうぞ」とお届けすると「私ね、家では毎日チョコを食べていたの。入院してから食べてなくて、今日移動販売が来るのを楽しみに待っていたの。(ひとつ口に入れて)ああ、おいしい!」
今日もこのブログに来てくださりありがとうございます。
小さな願い事を叶えることは、その人の人生を尊重することだなあ。
ありがとう、旧病院
こんにちは。やさしさビタミンブログの工藤昭子です。
先月から、旧病院の取り壊し工事が始まりました。
院長blogでお読みになった方もいらっしゃると思います。
工事前に神事が行われた際、院長・事務長と一緒にぐるっと回ってきました。
引っ越し以来、足を踏み入れたのは初めてでした。
物がないがらんどうの建物は、あんなに狭かったのに広くて不思議な感じがしました。
低い天井、狭い廊下、固い床のピータイル。狭いからこそ、職員同士が顔を合わせてよく声を掛け合っていました。
トイレが少なく狭くて、患者さんにはご不便をおかけしていましたし、夏はクーラーがなくて汗だくで過ごしていました。
患者さんのお風呂はエレベータで何度も行ったり来たりしていたんですから、スタッフは本当に大変だったなあと思います。
お風呂に水平移動できるだけで、今の環境は夢のようです。
なんだかんだと言いながらも、愛着のある建物でした。
回り終えて玄関を出ると、横にライラックの花が5分咲きでした。
誰も通らなくなった病院の入り口で、誰のためでもなくいつも通り咲いていた紫の花。
切ない気持ちになりました。
お世話になりました。旧病院。改めてありがとう。
今日もこのブログに来てくださりありがとうございます。
ボランティアさんがライラックを押し花にしてくださるそうです。感謝。
森のさんぽ
こんにちは。やさしさビタミンブログの工藤昭子です。
札幌はリラ冷えで寒い日が続いております。みなさまお変わりないですか?
先日ボランティア園芸部の方たちが整えてくださった花壇の道を、いよいよ患者さんに通っていただく日がやってまいりました。
「森のさんぽ」と名付けたイベントです。
車いすでバラのアーチの下をくぐり抜け、色とりどりの花を見ていただく、ただそれだけのことですが、職員がシャボン玉をしたり写真を撮ったり、音楽の生演奏もついています。
シュヴァービングの森は今、新緑でいっぱい。
風の音、葉っぱのさやさやいう音、小鳥の声がします。
花をいっぱいにしたくて、鉢植えやアサガオの造花まで駆り出されました 笑。
保育園の園児たちにはジャガイモを植えてもらいました。植えているその姿を、働くお母さんたちに見てもらって、なんだかほっこりする時間を過ごしました。
大事に育てて秋には一緒に収穫しましょう。これもひとつの食育になるでしょう。
2F病棟のテラスには大きなパラソルが来ました。
ミニトマトやインゲンなどがトートバッグの形をしたポットに蒔いてありました。
もう少し温かくなったら、パラソルのあるあたりに置いて、ここでも患者さんと一緒に水やりや、収穫が楽しめそうです。
今日もこのブログに来てくださりありがとうございます。
大人も子供も土に触れ植物を一緒に育てるっていいですね。
日曜の午後、オンラインで
こんにちは。やさしさビタミンブログの工藤昭子です。
以前にも書いたことがあるのですが、私は勝原裕美子さん(オフィスKATSUHARA)を尊敬していて、ブログや著書を読んだり、主催する勉強会に時々お邪魔しています。
日曜の午後、オンラインで「トランジション」のワークショップに参加しました。
勝原さんは大学を卒業後に百貨店で働き、主任まで昇格したあと看護大学に入りなおして看護師になりました。その後大学教員になり、さらに聖隷浜松病院の看護部長に転身。このプロフィールだけでもとても興味深い。仕事と仕事の間にどんなことをお考えになり、決心したのだろう。凡人の私からすると、まるで看護界のスターのような心持で見てしまいます。心酔する熱心なファン。はい、そう思います。
看護部長さんだった頃に書いておられた「やらまいかっちゃん」というブログに、未熟な管理者である私はどれだけ救われたことでしょうか。その後独立して個人事務所を立ち上げ、現在は私塾で看護管理者のための学び場を開いておられます。
ああ、私もその私塾に行きたい!と思いながらぐずぐずと月日だけが過ぎていってます。
勝原さんのセミナーは、毎回不思議と時間を忘れてしまいます。
勝原さんの伝えたいことがまずあって、それから参加している個人の体験に符合するところがあって、心の中で講義と自分の体験を行きつ戻りつします。
勝原さんから繰り出される、絶妙な問いによって過去の体験や感情が引き出されていきます。コーチングを受けているような、そんな感じで進んでいきます。そしてこの揺さぶられ感がなんとも心地いいのです。オンラインでは3~4人のブレイクアウトルームで自らの体験を話しあい、最後に今日のゴールへと導かれてクロージングとなります。そのプロセスが自然で無理がありません。
しかも終了後は「もう少しこのことを学びたい」という余韻が残ります。
さっそく本をぽちっと買いました。これがめっぽう面白い。
本当に魅力的で素晴らしい授業。こういう先生にずっと学びたい。
そして学ぶばかりではなく、out putもしないとね、と思ってはいるのですが、まだまだ修行が足りません。
なんとか勝原流を自分にも取り入れようと頑張ってます。
今日もこのブログに来てくださりありがとうございます。
遠くてもオンラインで学べるのは、本当にありがたいね。
花からもらうパワー
こんにちは。やさしさビタミンブログの工藤昭子です。
今年もボランティアさんの園芸部が集まり、花壇の整備をしてくださいました。
シュヴァービングの森の横、そら豆型の花壇には背の高いアーチが置かれ、根元にはバラが植えられています。アーチをくぐって車いすの方が花や野菜に触れることができるように、という大胆なレイアウトになりました。
昨年私たちの病院がクラスターになっていたとき、職員も幹部も苦しい思いを毎日重ねていました。
患者さんやご家族への申し訳ない気持ち、倒れていく職員への心配、いつになったらこの状態を抜けられるのかという不安の中で、毎日を過ごしていました。
クラスター収束後からは移転に向けての準備が急加速したので、立ち止まる暇もありません。
職員がただ前に進むしかない中、ボランティアさんたちが花壇に集まり、瓦礫を取り除き土を入れ、花の苗を植えてくれました。正直に言うと私は花壇のことまで頭が回らず、翌年からでもいい、とさえ思っていましたが、ボランティアさんたちは自主的に集まり、オープンに間に合うように花壇を整えていてくれたのです。
そこからどれだけパワーをいただいたことでしょうか。
私たちの病院はボランティアさんなくしては成立しません。
音楽・アート・飾りつけ・お裁縫・イベントの裏方etc・・・。
その折々に文字通り花を添えてくださり、温かさや優しさを醸し出してくれています。
病院職員だけでこのような雰囲気はだせるものではありません。
適切な感謝の言葉がみつかりませんけれども、これからもみなさんがお元気で活動してくださることを祈っております。
今日もこのブログに来てくださりありがとうございます。
心が煮詰まったら、土仕事だね。
病は市に出せ
「問題は小さなうちに対処したほうがいい。様子を見よう、なんて言ってると膨れ上がって対処できないほど深刻になるから」
昔お世話になった上司から教わったことです。
職場のマネジメントに携わるようになってから、この言葉をよく思い出します。
様子をみていて大問題になった経験もありますし、問題とも感じてなかったところから突然大火が発生したこともあります。
昨年「病は市に出せ」という言葉を知りました。
徳島県の旧海部町(現海陽町)で古くから言われてきた格言だそうです。
ここは日本で最も自殺率の低い地域ということで、数年にわたり環境や健康などが調査されました。
他の地域と比べて特に目立った違いはないのですが、地元住民に聴き取り調査をして浮かびあがってきたのは5つの自殺予防因子でした。
それは、濃すぎない緩やかな人間関係、多様な価値観の尊重、固定化されない人への評価、自己肯定感の醸成、助けを求めていい環境、です。(2021.10.21北海道新聞・朝の食卓より)
また江戸時代発祥の「みせ造り」という縁台付きの住宅が並んでいて、生活空間を歩くだけで住民が始終会うので、会うたびに「困りごとを小出しにする習慣がある」のだそうです。
この記事を読んでから、問題が小さいうちに対処するのも、一人一人の悩みが小さいうちに出すのも、切り取り方がちがうだけで本質は同じだなと思ったのです。
「こんなことぐらい」「はずかしい」と思わずに気安く誰かに言えると、それだけで気持ちが楽になることもありますし、「そんなことで悩んでいたの?」「だいじょうぶだよ」と手を差し出してくれたら、悩みも軽くなることでしょう。
これを言わずに限界まで我慢していると、周りが知らないうちにとても深刻な病に陥っていることもあるのです。
大事なのは悩みを出しやすい環境になっているか、悩みを聞いた方が一緒に考え行動しようとしているかどうか、じゃないかと思います。
私がこの病院に来る前に、前野総長から言われました。
「僕たちはどんな小さなこともよく話しあう。だから孤独にはならないよ」と。
着任して驚いたのは、多職種の人に聴く姿勢と多様な価値観を受け入れようとする姿勢が定着していたことでした。
よそ者だった私もここへ来て早7年になりますが、今でもとにかくよくしゃべり、よく聞きあう職場だなと思います。
今日もこのブログに来てくださりありがとうございます。
行ってみたいなあ。海陽町。
ワゴン販売1か月経ちました♪
売店のワゴン販売を始めてから早1か月が過ぎました。
毎週月・火・水と曜日ごとに病棟へ行くのが定着してきて、患者さんが楽しみにしてくださっているのがわかります。
ワゴンにびっしりと商品を載せていましたが、それでは足りなくなって2台目も登場。食品や日用品が溢れんばかりに詰まっています。
病棟に到着すると、待ってましたと数名の方が入れ替わり立ち替わり来られ、真剣に品定めをしています。
看護職員が患者さんを病室から連れ出してきて、つかず離れず買い物風景を見守っています。
「今日はガムはないの?」
店員さんが「あっ」と言って、職員に目配せし、急いでお店に取りに行きます。
ガムを手に戻ってくると先の患者さんが「すまないね」なんて言いながら買ってくださる。
それから「前に食べたぶどうパンがおいしかったから」とリクエストもいただき、それじゃ次回来るとき持ってきますね、なんて会話がされていると「なになに、そんなにおいしいの?じゃあ私にもおんなじのひとつお願い」という別な方からのお声もかかって、ちょっとしたぶどうパンブームが起きたりしています。面白いですねえ。
お財布の小銭を数えて出して、というのも久しぶりのことだったりします。震える手指で小銭をつかみ出すのも少々時間がかかりますが、店員さんは「それもリハビリだわね~」と笑顔でのんびり待っていてくれます。
こんな風にしてあっという間の30分。さて、また来週。
今日もこのブログに来てくださりありがとうございます。
みなさんのお顔を見てるだけで幸せ。
おむつマイスターへの道
こんにちは。やさしさビタミンブログの工藤昭子です。
今日はお食事中の方は読まないでくださいね。
「それでは、よろしくお願いします。」と言って、試験が始まった。
患者さん役の人はベッドに仰向けで天井を見ている。
看護者役は広げた紙おむつの中のギャザーを立ち上げ、テープ部分の亀裂を破る。
広げたパットの方向を確かめてから、ギャザーの中に敷きこむ。これらは、正しく効果的におむつを使うための下準備である。
患者役の人に「左側を向いてください」と言い、横を向いた腰の中央あたりにおむつの中心を当てる。ここが一番の要だ。体形や股関節の具合なんかを考慮しながら、患者役は体を元に戻し、さらに反対側を向いてもらって、おむつのテープ部分が左右対称に出ているのを確認する。
パットは効率よく吸収するためのものだ。そしてその上から外側のおむつをきつすぎず、緩すぎず当てて、テープは下から先に止める。全部を止め終わるまでどちらかの手が必ず、患者さんの身体にに当ててある。テープを全部止めた後はお腹周りや鼠径部分が苦しくないか、再度確認する。それで「できました」と終わることができる。
3年前紙おむつの会社から「おむつマイスター」という講習会を催し講師を派遣している、という話を聞いた。
その頃私たちの病院ではおむつの種類は統一されておらず、その使い方は看護者の経験に依っていた。意外に思われるかも知れないが、看護師は大人のおむつの当て方を看護学校では習う機会がない。できるだけおむつを使わずに過ごしていただくのが理想ではあるけれど、トイレに行くことができなくなる時がくるのが現実だ。
持ち込まれるおむつの性能も千差万別で、質のいいの悪いの玉石混交だった。排泄物がおむつの脇から漏れると、寝巻やシーツも汚れる。交換にはどう頑張っても20分くらいを要する。日に何度もこうした交換があると、患者さんも職員もお互いに苦痛である。
なんとかできないかなと思っていたところに、先の話である。
私は3年間教えてくださいと頼んで、院内で勉強会を開くことにした。
おむつマイスター講座は月1回・全5回コースで、最後に試験がある。筆記試験と実技試験の両方に合格しないと修了証書は出ない。
3つの病棟からそれぞれ2名ずつ、3年間合格したらマイスターが各部署6人ずつになる。その人たちが相互に教えあったらおむつ交換の質が上がり、患者さんがより快適に過ごすことができるだろう。そして看護者の負担も軽くなるだろうと思ったのだ。
今回、3期目の人たちの修了試験が終わった。実技試験を見学させてもらったが、実に手の動きに無駄がなく、なめらかである。患者さんの身体におむつを合わせる時も、手つきの余裕があり優雅に見える、といったら褒めすぎだろうか。受講生に聞くと、試験のためにずいぶん練習をしたのだという。
受験生皆が修了書を手にして、おむつマイスターの称号をもらった。
排泄というのは人の尊厳に関わる。おむつをせざるを得ない人にとってはできるだけ手早く、きれいにしてほしいものだ。こういう技というのは、受け手にとってどうであったかの評価をもらいづらい。けれど、きっと手から伝わるものがあるはずだと思っている。
今日もこのブログに来てくださりありがとうございます。
おむつ道、といってもいいかもね。