高齢者ケア
カンフォータブル・ケア学びに来ました!
こんにちは。やさしさビタミンブログの工藤昭子です。
6月の終わりに、認知症カンフォータブル・ケアの研修に来て下さった方がいました。
以前「精神科看護」という看護雑誌に、棟方師長と私が書いたカンフォータブル・ケアについての記事があるのですが、それがきっかけでお申込みいただいたそうです。(うれしい!)
その方、Aさんは認知症の専門病棟にお勤めの方で、私たちよりはるかに知識や経験が豊富です。
4年ほど前にカンフォータブル・ケアの提唱者・南敦司さんの講演を聴いて、ご自分の部署で取り入れようと始めたそうです。しかしなかなか全体に浸透しない、どうやったらみんなでできるだろう。それがAさんの課題です。
お話を聴いていると、できているところはいっぱいある。でもスタッフにそのフィードバックが足りなかったかもしれない。「今のでいいよ」「そのケアで患者さんが喜んでくれてよかったね」と返したり、みんなで共有するといいかも。ご自身の気づきがいっぱいありました。
カンフォータブル・ケアって患者さんだけじゃなく、一緒に働くスタッフもカンフォータブル(心地いい)になっていくんだ。カンフォータブル・ケアをしたら、結果看護が楽になるし、時間がかかるようでいて、逆に早く物事が進むんだよ、ということをスタッフが体感したら、きっと進んでやるようになるよね。
ってなことを、棟方師長&長谷川師長のカンフォータブル・ケアコンビと対話しました。
カンフォータブル・ケアって、お金もほとんどかからないし、いつでも始められるし、どうして普及しないんですかね。知らない人多いですよね、って話になりました。
これって認知症高齢者のためだけじゃなく、看護すべき対象者全部に必要なケアだと思うし、職場の同僚に対しても有効だと思うんです、とAさん。
確かに~全員同意です。
カンフォータブル・ケアの中心軸は他者へのリスペクト(敬意)だと私は思うのです。
混乱がおさまって落ち着いた患者さんは、その人らしさを見せてくれます。
よい人間関係と深い相互理解が生まれるケア、やってみた私たちが立証します!と表現しなくちゃね、そんな風に私たちも課題をいただきました。
たくさんの刺激をいただき、自分たちがどんなに恵まれた環境にいるかを感じました。
ありがとう、Aさん。
今日もこのブログに来ていただきありがとうございます。
コンビは講師としてガンガン出て行ける人たちです。
身体抑制ゼロ
こんにちは。やさしさビタミンブログの工藤昭子です。
先日障がい者病棟の師長さんが「部長、ご報告です」と言いながら合格証書を持ってきました。認知症ケア専門士。忙しい日々の中で勉強していたのは知っていましたが、やりましたね~!
うれしい報告でした。
当院では5年前から「認知症カンフォータブル・ケア」を導入し、それをきっかけに認知症看護に関心を持つ看護師さんが就職してくれるようになりました。
昨年は認知症看護の認定看護師課程に進んだ看護師もいて、これからますます認知症ケアに磨きがかかると予感させてくれます。
この病棟では昨年7月から身体抑制がゼロになりました。
それまでは経管栄養のチューブや、気管チューブが入っている方が、ご自分でふいにチューブを抜くことがあって、それを防ぐために手に「ミトン」をつけていました。
抜くことは命の危険が伴うため、いかに抜かないよう防ぐかが優先されるのは、病院ならではのこと。しかし一方で不快なものが身体についていて、それを取り外したいと思うのも人として自然なこと。ずっとつきっきりにはなれない現状。ここに看護師のジレンマがあるわけです。
チューブを外した患者さんに「(チューブがなくなって)お鼻、すっきりしましたね」「次のごはん(経管栄養)まではこのままでいましょうね」と率先して優しい声をかけていたのはこの師長さんでした。
こうした声掛けがスタッフにも浸透し、安易に抑制に戻ることなく「まず何ができるか」をみんなで考える習慣が身に付きました。
自分たちがPCR検査をすることが増えて「めん棒で突っつかれるだけであんなに痛いのに、それがずっと鼻に入っているんだから、患者さんは苦痛だよね」という共感も、抑制ゼロにつながっていると言います。
看護部の目標に「身体抑制を限りなくゼロにすること」を挙げていました。
スタッフが納得感を持ってゼロにできていることが、なによりうれしいです。
今日もこのブログに来ていただきありがとうございます。
いいと思うことを地道に続けること。言い続けること。
久々の聞き書き~長谷川和夫さんのこと
こんにちは。やさしさビタミンブログの工藤昭子です。
「部長、ちょっとこれ見てください。私、聞き書きしたものなんですが」
と言ってボランティア・コーディネーターの鈴木さんがA4にびっしり文字が書き込まれたプリントを持ってきました。
2021年の4月までゆる~く活動していた「聞き書き部」。
クラスターが起きてしまい、みんなで集まるのはしばらくやめとこうか、と決めてから1年半以上活動中止状態が続いています。
なにせ部長の私自身のモチベーションが下がったままで、再開はいつになることやら・・・という中、鈴木さんだけはコツコツとひとりで聞き書きを継続していました。
お母様の子供のころのことや戦争のこと、お父様との馴れ初め、子育てのこと。
語るごとにお母様の記憶は鮮明に呼び起こされて、お話は尽きなかったと言います。
なんとも温かい光景が目に浮かびます。
そんな鈴木さんが今回持って来てくれたのは、テレビのインタビュー番組の文字起こし。
長谷川式簡易知能評価スケール、で有名な精神科医・長谷川和夫先生の娘さんを取材した番組でした。
長谷川先生は認知症医療の第一人者であり、2017年にご自身も認知症になられたと公表しました。
その後も自分自身を観察して講演会で話すなどの活動をしてましたが、昨年(2021)年11月に老衰で旅立たれました。
番組では娘として、また高名な医師を支える秘書として共に行動し支えてきた中から感じた言葉を、お話されていました。
鈴木さんはこの番組を見て、「ウチの病院でやっている、カンフォータブル・ケアにも通じる大事なことが話されている」と思って書き起こししようと決めたのだそうです。
私一人で読むのはもったいないので、朝礼でこの話をして関心のある方にコピーを差し上げました。
今日もこのブログに来ていただきありがとうございます。
感動を伝える、というのは誰かの心に火をつけるね。
寄り添う朝
こんにちは。
やさしさビタミンブログの工藤昭子です。
週に2,3回朝の院内をラウンドしています。
目的は夜勤者を労うことなんですが、ときどき私の方が労われることもあり、そして小さな幸せを感じる時間でもあるのです。
先日は障害者病棟でこんな光景がありました。
ナースステーションのそばに、認知症の方と一緒に過ごす場所があるのですが、そこに副主任さんと患者さんが寄り添って座っていました。
朝というのは勤務者も少ないですし、やることがたくさんあります。
一般的な病棟だと「座ってないでこっちの仕事やって!」といわれるような光景ですが、ここのスタッフは認知症ケアを大事にしているので「今そこに座っていることが、なにより大事な仕事」という風に共通理解されているのです。
つまり
認知症の方に寄り添うケア > ルーティン仕事 ってことです。
ナースコールが鳴ってばたばた走っているスタッフがいても「大丈夫、あなたはそこでその方のそばにいることが今一番重要なミッション」と認識されているってことです。
もちろんものごとの重要度は刻々と変化していきます。
命に係わるようなことが別なところで起きていれば、優先度は当然変わっていくものです。
けれども、今は、この方のそばでその世界に一緒に入ることが優先される、そう私たちは判断したよ。っていうこと。
こんな文章で伝わっているでしょうか?
朝いちばんでこの光景を見られる。
なんて幸せな朝でしょうか。スタッフに感謝です。
今日もこのブログに来ていただきありがとうございます。
珈琲でも運んであげたいね。
相手に関心を寄せることがケアになる
こんにちは。
やさしさビタミンブログの工藤昭子です。
認知症カンフォータブル・ケアの研修生がやってきました。
一週間の学習プログラムは結構盛沢山です。
カンフォータブル・ケアの伝道師・棟方師長さんの講義から始まって、病棟での実践を語る長谷川師長さん、ふくじゅそう外来(認知症外来)の田村先生の診察にも入っていただきました。
合間に認知症ケア委員会にも参加しました。私も写真班として同席。
この委員会は平成28年に発足しました。当初は看護師だけでしたが、カンフォータブル・ケアを始めるにあたってコメディカルにも参加してもらうようになりました。
カンフォータブル・ケア導入以前に比べて自分たちのケアに対する考え方がどう変わったのか、研修生に教えてくれました。
少し抜粋すると・・
ナースA:以前は認知症患者さんが入院してくると「大変だな」と感じていたけれど、今は先に「せん妄が起きるかも知れない」と心構えができているので、あまり困ったと感じることはない。入院初日は環境が変わって混乱するので、まずはぐっすり眠ってもらおうと思う。次にこの方は何に関心があるのかなと聴く。将棋が好き、美空ひばりが好き、そういうことがわかれば、それを取り入れて一緒にすごします。
看護補助者B:今はとにかく会話をして、笑わせようとしています。その人の好きなこと・ダメなことを早く知るようにしています。自分で(対応が)だめだったら、他の仲間と一緒にやるとだいたいなんとかなるものです。
ナースC:焦ると状況を悪くするので、他の仕事を終わらせて、時間を取り本人の世界観に入るようにします。あとは、不快なことは早く終わらせるようにします。
ナースD:認知症があって、トイレに行くときにナースコールを押せない方に、センサーマットを使おうとすると「なんで(呼んでないのに)来るの?監視しているの?」と不快に感じられる人がいる。そういう時は遠めで見守ったり、たまたま近くを通りかかったようにふるまって演技している。
私はこれらを聞いてほほう~とうれしくなりました。
そのあと田村先生から「これまでの前向きな積み重ねが今に続いている。この人の嫌いなことは何だろう、好きなことはなんだろう、と考え対応を重ねていくことで、心に余裕ができる。認知症の人はいつも不安を感じている。その不安を少しでも楽にしてあげようと関わることが大事なんです」とコメントいただきました。
病気に関わらず相手に関心を寄せることが大事なんだなと、スタッフの言葉から感じたのでした。
今日もこのブログに来ていただきありがとうございます。
研修生が来てくれるって、自分たちのやってきたことの振り返りになるね。
カンフォータブル・ケアを始めて5年経ちました
こんにちは。やさしさビタミンブログの工藤昭子です。
研修や学会が対面式でもやるようになって、やっぱりうれしいです。
今月、離島の病院から看護師さんが研修に来てくれることになりました。2年越しでチャンスを待っていてくれたのだそうです。
当院では「ホスピス研修」と「カンフォータブル・ケア研修」の二つを受け入れてますが、今回は「カンフォータブル・ケア」のお申込みです。
何度かブログにも書いたのですが、初めての方向けにちょっとおさらいをしてみます。
カンフォータブル・ケアというのは認知症の方へのケアの手法です。2017年に提唱者の南敦司さんに研修会をしていただいて、病院全体で始めました。
カンフォータブル・ケアには「いつも笑顔」「いつも敬語」「やさしく触れる」などの基本的10項目がありまして、これを実直に守る、というのがケアの姿勢です。
これを守ることによって看護職員の態度が柔らかく優しくなり、それによって患者さんの心も落ち着いて、周辺行動(いわゆる困った行動)が徐々に減ってきます。自分たちの対応ひとつでこんなにも患者さんが穏やかになるのだとわかると、手ごたえを感じてきます。そして今度は患者さんにもっと喜んでもらいたい、という行動が増えてきました。
忘れられないのが一般病棟の夏祭りです。デイルームに手作りの大太鼓が設置されました。中身はポリバケツなんですが、それに紙を貼って色を塗り大太鼓が完成です。100円ショップで用意しためん棒をバチ代わりに、太鼓を叩いて盆踊りを踊りました。
看護師たちは祭りの法被を着て、病室を練り歩きます。寝たきりの患者さんのお部屋に入ると、患者さんは目をまん丸くしています。めん棒を手に握ってもらって、手作りの太鼓を胸元に近寄せると、懸命にめん棒を持ち上げようとします。なんとかコン、と当てることができて大満足。笑顔いっぱいの写真を撮影して、ご家族にプレゼントしました。
こうした小さな幸せごとを日々積み重ねて、5年という月日が経ちました。
外来でも病棟でも、認知症の患者さんが安全で穏やかに過ごせるような「寄り添い」がごく普通に見られます。
その方を抑えるのではなく、見守りながら一緒に過ごします。
こうしていくうちに、言葉や身体への抑制もなくなりました。
新しく入ってきたスタッフは驚きます。
けれども入ったところがそういう環境だと、それに倣うので当たり前になるのです。
今日もこのブログに来ていただきありがとうございます。
看護師たちが自発的にするところが、このケアのスゴイところ。
おむつマイスターへの道
こんにちは。やさしさビタミンブログの工藤昭子です。
今日はお食事中の方は読まないでくださいね。
「それでは、よろしくお願いします。」と言って、試験が始まった。
患者さん役の人はベッドに仰向けで天井を見ている。
看護者役は広げた紙おむつの中のギャザーを立ち上げ、テープ部分の亀裂を破る。
広げたパットの方向を確かめてから、ギャザーの中に敷きこむ。これらは、正しく効果的におむつを使うための下準備である。
患者役の人に「左側を向いてください」と言い、横を向いた腰の中央あたりにおむつの中心を当てる。ここが一番の要だ。体形や股関節の具合なんかを考慮しながら、患者役は体を元に戻し、さらに反対側を向いてもらって、おむつのテープ部分が左右対称に出ているのを確認する。
パットは効率よく吸収するためのものだ。そしてその上から外側のおむつをきつすぎず、緩すぎず当てて、テープは下から先に止める。全部を止め終わるまでどちらかの手が必ず、患者さんの身体にに当ててある。テープを全部止めた後はお腹周りや鼠径部分が苦しくないか、再度確認する。それで「できました」と終わることができる。
3年前紙おむつの会社から「おむつマイスター」という講習会を催し講師を派遣している、という話を聞いた。
その頃私たちの病院ではおむつの種類は統一されておらず、その使い方は看護者の経験に依っていた。意外に思われるかも知れないが、看護師は大人のおむつの当て方を看護学校では習う機会がない。できるだけおむつを使わずに過ごしていただくのが理想ではあるけれど、トイレに行くことができなくなる時がくるのが現実だ。
持ち込まれるおむつの性能も千差万別で、質のいいの悪いの玉石混交だった。排泄物がおむつの脇から漏れると、寝巻やシーツも汚れる。交換にはどう頑張っても20分くらいを要する。日に何度もこうした交換があると、患者さんも職員もお互いに苦痛である。
なんとかできないかなと思っていたところに、先の話である。
私は3年間教えてくださいと頼んで、院内で勉強会を開くことにした。
おむつマイスター講座は月1回・全5回コースで、最後に試験がある。筆記試験と実技試験の両方に合格しないと修了証書は出ない。
3つの病棟からそれぞれ2名ずつ、3年間合格したらマイスターが各部署6人ずつになる。その人たちが相互に教えあったらおむつ交換の質が上がり、患者さんがより快適に過ごすことができるだろう。そして看護者の負担も軽くなるだろうと思ったのだ。
今回、3期目の人たちの修了試験が終わった。実技試験を見学させてもらったが、実に手の動きに無駄がなく、なめらかである。患者さんの身体におむつを合わせる時も、手つきの余裕があり優雅に見える、といったら褒めすぎだろうか。受講生に聞くと、試験のためにずいぶん練習をしたのだという。
受験生皆が修了書を手にして、おむつマイスターの称号をもらった。
排泄というのは人の尊厳に関わる。おむつをせざるを得ない人にとってはできるだけ手早く、きれいにしてほしいものだ。こういう技というのは、受け手にとってどうであったかの評価をもらいづらい。けれど、きっと手から伝わるものがあるはずだと思っている。
今日もこのブログに来てくださりありがとうございます。
おむつ道、といってもいいかもね。
祝合格 介護福祉士誕生!
こんにちは。やさしさビタミンブログの工藤昭子です。
この春、当院にひとりの介護福祉士さんが誕生しました。
私どもの病院では看護補助者という職種がありまして、文字通り看護師の仕事をサポートしています。
シーツ交換や環境整備、入浴介助、お食事に関するお世話など、仕事内容は多岐に渡り、しかも急に「今、これお願い」と頼まれることが多いので、とても忙しい仕事です。
病院での仕事は、資格の有無にかかわらず同じ仕事をしていただいてます。
けれども資格によって手当てが違います。
私は資格を持ってない人達にそのことを伝えて、受験するよう勧めてきました。
ようやく念願叶ってお一人の方が受験し、このたび見事合格しました。
介護福祉士の受験資格には大まかに二つのルートがあります。
一つは養成学校に通って受験する方法と、もうひとつは介護職員実務者研修を受けて、3年間の実務経験があれば、介護福祉士の受験資格が得られる「実務経験ルート」です。当院の職員も、この実務経験ルートで挑戦しました。
2021年度の国家試験合格率は72.3%で、過去2番目に高かったそうです。
全国で60,099人の方が合格し、当院の職員がそのうちのひとり、ということになりますね。
仕事中にお祝いを伝え、忙しい毎日の中、どんな風に勉強したのか本人に尋ねました。
「実務者研修を受けたのは3年前だったので、その頃の資料を引っ張り出して勉強しました。でもどうしても頭に入っていかなくて、過去問題を何度も解き、you tubeの受験対策動画を何度も見て覚えました。」
「へえ~今や受験勉強もyou tubeなんだね。忙しい中でよく勉強頑張ったね。」
「もっと若いうちにやっておけばよかったと思いました」
彼女は嬉しそうに目じりを下げて笑いました。
こんな風に、人知れず静かに努力してる人が報われると、自分のこと以上にうれしいものです。
今日もこのブログに来てくださりありがとうございます。
学ぶのはいつからだって遅くはないよね。
困りごとはなんですか
こんにちは。やさしさビタミンブログの工藤昭子です。
札幌は大雪に見舞われて、道路状況が悪い日が続いています。
ホームケア・クリニック札幌に聞くと、通常30分くらいで到着する患者さん宅まで3~4倍の時間がかかっているとか。
訪問ステーションの皆さんもご苦労様です。
真冬の路面は歩行者にとっても危険です。ふんわり積もった雪の下にはつるんとした圧雪が潜んでいて、横断歩道は特に危ないです。
整形外科病棟の師長だった時、横断歩道で転んで歩けなくなった女性が救急搬送されてきました。
足首を骨折していてすぐに入院・手術をすることになったのですが、その方は「入院はできない。すぐ帰りたい」と泣いて医師の話を受け入れられませんでした。
担当ナースも困り果て、私が対応を代わりました。
こういう時は温かい甘い飲み物を用意します。ちょっと一息いれるために。
ぽつぽつと語り始めたのは、その方は一人暮らしであること、お金がなく健康保険にも入ってないので入院はできないこと、そして一軒家のため、水を落とさないと凍結してしまう心配があることがわかりました。
本州にお住いの方のために「水道が凍結する」とは、を説明しますと・・・。
北海道では暖房を切った状態で、気温がマイナス4度以下になると家の水道が凍結する恐れがあります。凍結した水道管を溶かすのは大変な時間と労力がかかりますし、管そのものが破裂して家中水浸しになる場合もあるのです。
ですので長期間暖房を消して留守にするときは、管内の水を落としておかないとなりません。
さて、話は戻って健康保険や入院費についてはソーシャルワーカーに頼んでなんとかなりそうだったので、問題は水道だけになりました。
私は上司に報告してタクシーチケットを往復分もらいました。人助けは当たり前だと考えてくれる、いい上司でした。
初めて松葉杖をつく患者さんと一緒にタクシーに乗り、自宅につきました。
患者さんは慣れない松葉杖でなんとか玄関口まで登りました。
そこで私に水道の元栓を指示してくれました。台所・洗面所・トイレ。
それから着替えをかばんに詰めました。
こうしてその方は病院に戻り、そのあとは安心して入院されました。
真冬になると思い出す出来事です。
今日もこのブログに来てくださりありがとうございます。
困りごとはその人に語ってもらわないと。
充実の秋~方波見康雄先生のこと~
こんにちは。やさしさビタミンブログの工藤昭子です。
今日は、先日当院で講演会をしてくださった、方波見康雄先生のことを書きたいと思います。北海道新聞に毎月一回連載されている、「いのちのメッセージ」。
私は愛読者の一人です。
方波見康雄先生は、よく患者さんとのかかわりを書いていらして、信頼と愛情が行間から滲み出しているように温かく感じられます。
御年95歳になられる今も、奈井江町の方波見医院で週に一度診察に出ていらっしゃると伺いました。講演会のスライドもご自分で作られ、スマホを使い、驚いてしまいました。
先生の講演を聴いたのは初めてでしたが、ひとつのものごとを科学者の立場から、あるいは感情という側面から、また一市民として探究されて、深く思索されていることがわかりました。
冬になると何も言わずにそっと医院の周りを除雪してくれる人がいて感謝していること、若くして亡くなった師長さんのことを想うと今でも涙が出ます、というお話に胸が温かくなりました。
そして「生涯現役」という言葉をこれほど考えたことも初めてでした。
組織の中にいると「定年」という期限を意識せざるを得ないのですが、自分の力でいつまで貢献できるのか、と考えさせられました。
先生が仰るには四季の中で春がはじまりではなくて、秋が大事なんだと。
花が終わって葉っぱが落ちて土に還り、種にいっぱいいろんな栄養分が詰まって充実しているから、翌年に向けてよい準備ができるんだ、と。
だから人生も秋の頃が充実しているんですよ、と。
人生にはいろいろな選択肢がありますけれども、方波見先生はご自分のことを「町医者」とおっしゃって、ずっと奈井江町の医療を守り続けていらした。
変わっていくことと、変わらないこと。
私などが言うのはおこがましい限りですが、尊いなあと思います。
2時間はあっという間で、先生の「伝えたい」エネルギーを強く感じました。
どうかお元気で、これからもお話を聴かせてください。
今日もこのブログに来てくださりありがとうございます。
次の世代が未来を作れるように。