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看護部からのお知らせ

おむつマイスターへの道

こんにちは。やさしさビタミンブログの工藤昭子です。
今日はお食事中の方は読まないでくださいね。

「それでは、よろしくお願いします。」と言って、試験が始まった。
患者さん役の人はベッドに仰向けで天井を見ている。
看護者役は広げた紙おむつの中のギャザーを立ち上げ、テープ部分の亀裂を破る。
広げたパットの方向を確かめてから、ギャザーの中に敷きこむ。これらは、正しく効果的におむつを使うための下準備である。
患者役の人に「左側を向いてください」と言い、横を向いた腰の中央あたりにおむつの中心を当てる。ここが一番の要だ。体形や股関節の具合なんかを考慮しながら、患者役は体を元に戻し、さらに反対側を向いてもらって、おむつのテープ部分が左右対称に出ているのを確認する。
パットは効率よく吸収するためのものだ。そしてその上から外側のおむつをきつすぎず、緩すぎず当てて、テープは下から先に止める。全部を止め終わるまでどちらかの手が必ず、患者さんの身体にに当ててある。テープを全部止めた後はお腹周りや鼠径部分が苦しくないか、再度確認する。それで「できました」と終わることができる。

3年前紙おむつの会社から「おむつマイスター」という講習会を催し講師を派遣している、という話を聞いた。
その頃私たちの病院ではおむつの種類は統一されておらず、その使い方は看護者の経験に依っていた。意外に思われるかも知れないが、看護師は大人のおむつの当て方を看護学校では習う機会がない。できるだけおむつを使わずに過ごしていただくのが理想ではあるけれど、トイレに行くことができなくなる時がくるのが現実だ。

持ち込まれるおむつの性能も千差万別で、質のいいの悪いの玉石混交だった。排泄物がおむつの脇から漏れると、寝巻やシーツも汚れる。交換にはどう頑張っても20分くらいを要する。日に何度もこうした交換があると、患者さんも職員もお互いに苦痛である。
なんとかできないかなと思っていたところに、先の話である。
私は3年間教えてくださいと頼んで、院内で勉強会を開くことにした。
おむつマイスター講座は月1回・全5回コースで、最後に試験がある。筆記試験と実技試験の両方に合格しないと修了証書は出ない。
3つの病棟からそれぞれ2名ずつ、3年間合格したらマイスターが各部署6人ずつになる。その人たちが相互に教えあったらおむつ交換の質が上がり、患者さんがより快適に過ごすことができるだろう。そして看護者の負担も軽くなるだろうと思ったのだ。

今回、3期目の人たちの修了試験が終わった。実技試験を見学させてもらったが、実に手の動きに無駄がなく、なめらかである。患者さんの身体におむつを合わせる時も、手つきの余裕があり優雅に見える、といったら褒めすぎだろうか。受講生に聞くと、試験のためにずいぶん練習をしたのだという。

受験生皆が修了書を手にして、おむつマイスターの称号をもらった。
排泄というのは人の尊厳に関わる。おむつをせざるを得ない人にとってはできるだけ手早く、きれいにしてほしいものだ。こういう技というのは、受け手にとってどうであったかの評価をもらいづらい。けれど、きっと手から伝わるものがあるはずだと思っている。

今日もこのブログに来てくださりありがとうございます。
おむつ道、といってもいいかもね。