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2018年3月

道聞かれ顔

業界紙を読んでいたら、記事の中で「道聞かれ顔」というコトバが目に留まりました。
街中で「この人には道を聞いてもよさそう」とか「道を聞かれたがっている」という、ホスピタリティに溢れた表情のことを言うそうです。

「わたし街中を歩いているとよく道を聞かれる」という人、身近にいますよね。
柔和な笑顔で、まあなんというか「世のため人のため」オーラの出てる人と言ったらいいか。

<大阪で桜満開>

患者さんの話を聴くためには医療者も「道聞かれ顔」であることが大切だと記事には書かれていました。
看護学生の時にはベッドサイドで患者さんの話を一所懸命聞いていたのに、臨床現場に入って数年すると目の前の仕事に追われて「私に聞かないで・話しかけないで」モードになってしまう。忙しすぎるんです。どこもかしこも。

昔師長になりたてのころ、1年目の看護師が夕方詰所に戻ってくるなり、こう言いました。
「これじゃ私 ”処置屋”だわ。処置なんてロボットにやってもらいたい。なんのために看護師になったかわからない。」
やってあげたい、聴いてあげたいはたくさんあるのに、最小限の内容で終わる日々。
私はこの看護師とコトバが忘れられません。

さらにさかのぼって、私が新卒だったときのこと。
アコガレの先輩ナースFさんは、夜勤に入ると「今日は○号室の△さんの話を聴く日だから、しばらく戻ってこないからね。先にごはん食べてて」と言いました。
Fさんはまず全部の部屋を回って、ナースコールで呼ばれないようにきちんと一人ひとりの患者さんを看て、整えていました。
それから詰所から見える場所で、△さんとふたり、ベンチに座って21時の消灯をすぎてもじっくりお話を聴いていました。

患者さんの話を引き出すための時間を作り、中断されないように他の患者さんのこともしっかり手当しておく。
なんてかっこいいんだろう。こんな看護師になりたいと思ったシーンでした。

効率化も大事だけれど、何かを効率化するのはもっと患者さんが語ろうと思える余裕や空間を持つためでありたいものです。
診療報酬の改定で入退院支援に力を入ると点数が大きくつくようになりました。
入院前にしっかり説明して患者さんの持つ不安を解消し、情報を早く収集して病棟と共有することで、病棟看護師の負担が減るだろうと言われています。
すべての病院に適合するわけではありませんが、このシステムがうまく稼働すれば「道聞かれ顔」を増やすことになるかも知れないですね。

<新築病院の内覧会で>


今日もこのブログに来ていただきありがとうございます。
記録ものの音声入力。早く一般化されてほしいな。

冬に咲く桜~善意のつながりに感謝~

3月になり気温が上がって札幌も雪解けが進んでいます。
先日静岡から桜の木枝が送られてきました。
当院でボランティア活動をしてくださっているHさんの、東京のご友人からとのこと。

「え?どういうことですか?」と尋ねると、東京のご友人とは日ごろからHさんが当院でしているボランティアについて話をしていたそうなのです。

ご自身のご家族の喪失体験。ホスピスで活動していること。そしてボランティア活動がご自身のグリーフケアになっていること。仲間と共に活動することがひとつの楽しみになっていること。ご家族が活動を支援してくれていること。

それで共感してくれたご友人がわざわざ静岡から当院に送り届けてくれるように頼んで下さったのだそうです。
お二人の善意がここには詰まっています。

今日もこのブログへ来ていただきありがとうございます。
ようこそ、まだ雪の札幌へ。

ホスピス研修生を通して学ぶこと

ホスピスでは様々なところから研修生を受け入れておりまして、今年度は13名の方がおいでになりました。
短い方で1日~長くて1か月位の間、病院の寮に寝泊まりして研修されます。
滞在する間に一度院長・事務長・ホスピスナースと共にお食事をしながら感想などを聞かせていただくのですが、みなさんいろんなカルチャーショックを受けられていきます。

「ドクターが患者さんの家族構成や生活背景についてものすごくよく知っているのに驚いた」
「朝昼に行われる他職種カンファレンスの内容が濃い」
「自分のいまいる部署では対応できないようなことでも、患者さんの願いをかなえようとしている」
「回診で椅子を持って歩き、座って患者さんの話を聴く姿」
「時間の流れがゆっくり穏やかだけど、実は看護師はものすごく細かいことにアンテナを張っていて忙しい。忙しいのにそう見せないところがすごい」
「職員がみんな対等な感じ」

などが共通したところですが、先日いらした方がこんなことをおっしゃっていました。
「吸痰(痰を管を使って吸引すること)が少ないですよね。自分の病棟では亡くなる間際まで吸痰しているイメージがあるけど、ここではほとんどそういう姿はなくて驚きました」

それについて院長が「それはね、身体がむくむと(看護師に)怒られるからですよ」と控えめな声で答えました。

食事が摂れない⇒点滴をする⇒水分量が多くなる・代謝が悪くなる⇒体がむくむ⇒肺にも水がたまり痰が増える⇒痰を吸引する⇒患者さんは辛いという構図があるので、水分量を必要最小限に投与するように気を付けているそうなのです。

身体がむくんでくると、全身を観察している看護師から院長も怒られる・・とは私も初めて知りました。
しかも痰をさらに減らす秘策もあるそうで、緩和ケアの分野ではジョーシキなのだそうです。

今日もこのブログに来ていただきありがとうございます。
研修生の鋭い視点を通して、私も勉強になりました。

大丈夫。みんな一緒に頼むよ。

私はピーター・ドラッカーの本を使った読書会で、月に1度勉強しています。
もう5年くらいになるでしょうか。

読書会のメンバーは5~10人位で、異業種の集まりです。
それぞれが「経営者の条件」という本の、決まった章を事前に読んできて集まります。
読んだ中で自分が一番ぴんときた文章に線を引き、どうしてそこに線を引いたのかについて、話をします。
体験としていろいろ感じてはいても、いわゆる概念化できてない、コトバとしてうまくまとめられていないことがたくさんあるのですが、ドラッカーの本には「そうそう、それそれ!」って思うことがぴたっと明確に記されています。

一年かけて一冊の本を読んで話し合い、翌年また「まえがき」からスタートするのですが、まったく飽きることがなく、去年は引っかからなかったコトバに線を引くこともあれば、「やっぱりこの文章がすきだなあ」と思うこともあるし、まるで初めて読んだかのような新鮮さを味わうこともあります。
そして参加者はそれぞれ違う仕事をしていますが、悩む事柄は一緒だったりするので、自分の身に置き換えて考えることがとても勉強になります。

先日は、ある方が自分の率いるチームメンバーがみんなバラバラな方向を向いていて、同じ方向を向かせるにはどうしたらいいか、という話をされました。
それぞれは能力の高い人たちなのに、一緒に協力して一つのものを作り上げようという空気がなく、困っているという話でした。

それについて別の方が「リーダーが、”このチームはバラバラだ”と思っているといつまでもバラバラなんだよね。リーダー自身が”大丈夫。みんないっしょに頼むよ。”と思えばひとつになるんだ。”あなたの強みはこれこれだから、それを使ってね”と一人一人に伝えたらいいんだよ」と、柔らかにおっしゃいました。

そのコトバは私の体の中にするりと入ってきました。
自分の見方、思いひとつだなあと思うことは私もしばしばあります。
人の心や向き合い方を変えようと思うとうまくいかない、というのもよく経験してます。
「こうするべきだと思うからこうしてね」じゃなくて、
「私はこう思うんだよね。それを一緒にやってもらいたいんだ。手伝ってくれる?」という風に伝えたら、自分も楽に伝えられる気がします。

今日もこのブログに来ていただきありがとうございます。
スポーツみていてもそんな感じがする。青学とかカーリング娘とか。