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2017年3月

顔が見えるだけじゃ足りない〜在宅看取りの壁と地域連携〜

3月18日土曜日の昼下がり、当院講義室で緩和ケア研修会を開きました。
地域で、施設で、病院でそれぞれご活躍されている医療介護の方たちが30名ほど集いました。
ご多忙の中をありがとうございました。

演者であるホームケアクリニック札幌の梶原師長は、私どもと同じ法人内の在宅緩和ケア充実診療所の師長として勤務しておりまして、この日は在宅緩和ケアの概要、在宅での看取り、地域における多職種連携について事例を交えて講義をしてくれました。

人生の最終段階をどこでどう過ごしたいか

同クリニックの調査では、がん患者は終末期に近いほど多くの症状が出現し、急速に日常生活動作が低下することが多いとされています。
言い換えれば、亡くなるぎりぎりの時までトイレに歩いたり、食事や会話ができるということです。
20年以上前に他界した私の母も、前日までトイレに起き、少量ながら食事もし、亡くなるぎりぎりまで話すことができていました。
自分で自分のことが賄えなくなったのは、本当に亡くなる前日くらいからのことでした。

人生の最終段階をどのように、どんな場所で過ごしたいと思うのか、元気な時から考えて、家族で話し合っておくことが必要だと思います。今はこうしたいと思っていても、家族の状況や病状、心境によって変化は大いにありえます。こうあらねば、と決める必要もありません。いつでも状況に合わせて変更できるのですから。
在宅で最期まで、と決心された方をケアするには、苦痛が緩和されていること、生活が成り立っていること、家族もケアされていること、安らかな最期だと思えるように、多職種でサポートすることが大切と強調されました。

在宅での看取りの壁(=看取りを阻むもの)

講義の後、
ケアマネジャー、看護師、ソーシャルワーカー、介護福祉士らがグループに分かれて
「在宅での看取りの壁(=阻むもの)」について語り合いました

そこで出て来た「壁」は何かと言いますと

◆「施設や事業所の方針」・・単純に、その施設で在宅での看取りをしているかしていないか
◆「人的資源」 ・・人手が不足している、あるいは知識や経験が不足している
◆「日頃の関係性・ ご本人と御家族の意向の食い違い」・・ご本人は家で過ごしたいと思っていても、家族に負担がかかるから遠慮して言えないでいるとか・・
◆「 夜間サービスを提供する人員の不足」・・気持ちはあっても夜間の人員が確保できてないとできないことですね
◆「死がタブー視されていて、看取りよりも生への頑張りを支援してしまいがち というジレンマ」・・病院や施設でよく起こりうること。
◆「病院スタッフの、在宅イメージの不足」・・一人暮らしの人に在宅は無理でしょ、と決めつけてしまう

今日から私たちができること

 

ではその壁を越えて何ができるか?
正直簡単なことではないですね。
ケアの提供者としては、在宅ケアの実際をもっと世間に広めなければ必要な方に届かないし、施設などでは看取りの知識や経験を増やすとともに、構造的な整備も必要です。急に施設の方針や人数は変えられないですが、個人レベルでは、まずは自分の家族や回りの人、ご近所さんの体調を気にかけ、普段から対話を重ねる、少々お節介な人になる、なんてことはすぐできそうです。

ケアの受け手としては、自分が人生の最終段階にどんな医療を受けたいか、あるいは受けたくない医療は何かを意思表示しておくことも大事なことだなと思っています。

終わりの挨拶で梶原師長が

「顔の見える連携ってよくいいますが、顔が見えるだけじゃ足りないんですよ。顔が見えて、なおかつこの人、この事業所に頼みたい、この人に預けたら安心だと思ってもらえるようにならないと」と締めました。

病院もまったくその通りだと思いました。

今日もこのブログをお読みいただきありがとうございます。
まずは自分の周りから地道にコツコツですね・・。

手から気が伝わるんです

先日、市内でとあるタッチ・ケアを学んできました。

私が学んできたのは、いわゆるツボを押すとか、筋肉をもみほぐすマッサージではなく、撫でるようにソフトで軽いマッサージです。
スウェーデン発祥で、そもそもは未熟児のケアからスタートしたそうで、心地よさ、人の手に委ねることの安心感などを味わうことができます。背中や手足に最低10分のケアで、免疫細胞が活性化したり、体温が上昇したり、便通が良くなったり、睡眠の質が変わったり・・と個人差はありますが、さまざまな効果があるようです。
10年近く前にこのケアを知り、いつか学びたいと思い続けていたのですが、ようやく実現しました。

2日間の講習のうち座学を半日、実践演習を一日半行いました。
先生の実演を見て、動画を見ながら見よう見まねでやってみました。

手の向き、圧力・スピード・リズム。
やさしく、しっかりと密着させて、なめらかに。
触れることでお互いの体温を感じて、
だんだん相手の背中や手がいとおしく思えてくるから不思議。

お相手は、その日初めてお会いした人ですけどね(笑)。

今度は私がお相手になりました。
午後は両手を同時に、先生と受講生からケアしていただきましたが、あまりの心地よさにだんだん眠くなって声が聞こえなくなっていきました。
こんなに手を大切に扱ってもらったり、背中をいたわってもらうなんて・・とありがたくなります。
その日は、帰宅した途端に体が重だるくなって、かつてないほど熟睡しました。

2日間で、基本の動きを学んできました。
職場のMさんに練習台になってもらっていますが、最初に背中のケアをさせてもらった直後に「施術してる間、どんな気持ちでやってるんですか?」と聞かれました。
どんな気持ち・・・「なんというか、今日もお仕事ご苦労様、と思ってやっているうちに、だんだん背中が愛おしくなるんだよね~」という返事をしたら
「なんか手から”気”が伝わるんですよ~」と言われました。

今日もこのブログをお読みいただき、ありがとうございます。
うっかりへんな”気”を発しないように気をつけよう~~

 

仕事を辞めずに憧れの土地でちょっとだけ暮らしてみる

当院は徳洲会グループの1病院で、北海道では6つ、全国では71病院と連携しています。
今日はグループ組織としてのメリットだな、と思う看護師の「キャリアアップ研修」についてご紹介したいと思います。

グループ病院といっても、ひとつひとつは規模も機能も違う病院です。急性期の患者さんを診る高度医療の大型病院もあれば、当院のような小規模な病院まで様々です。最近では「トラベルナース」と言って一定期間をあちこち移動して働く派遣ナースの職もありますが、普通、違う土地で高度医療を学ぶとか、離島に行くということは、つまり今働いている組織を辞めて、引っ越しをして移り住むことが前提になります。
「移住」という大きな決断までしなくても、1週間とか1か月とかの期間をそこに住んで職場体験してみたいと言う人は、結構いるんじゃないのかなと思います。
「キャリアアップ研修」というのは、病院の中で得意な分野があって、なおかつ外部からの見学者を受け入れできる、というところが登録します。
毎年徳洲会本部から「キャリアアップ研修」を受け入れる病院は手上げしてくださいと声がかかるので、当院では毎年ホスピス緩和ケア病棟が手上げをしています。グループ内で最初にできたホスピスですし、日頃から見学者の多い部署でもあるので、広く門戸を開けているのです。
他院では、たとえば心臓血管内治療の先駆的な千葉西総合病院や、人工関節センターを持つ湘南鎌倉病院などの高度急性期治療に関わるものから、離島では屋久島徳洲会病院の「もののけ研修」などのユニークなものまでさまざまです。
キャリアアップ研修のリストは各病院に配布され、スタッフから希望者を募ります。
部署の状況などを考え併せて、所属長から推薦されると、看護部長同士で時期などを連絡調整する仕組みになっています。

南の島・温暖な気候・雪のない生活に憧れます

私もスタッフだったら、沖縄・離島・四国のあたりは今でも行って見たい・・
雪のない冬、白い砂浜、海辺でのんびり。

あ、遊びじゃありませんね。

さてこの2月と3月、冬の札幌に、大阪と神奈川からおひとりずつ研修に来られました。
2月の真冬のさなかに(でも雪まつりのときに)来ていただいた大阪のナースには、「札幌に着いたらまず最初に靴屋に行って滑らない靴を買って下さいね」とお教えしました。
院内を案内すると、そこここにある飾り付けを観ては感激してくださいました。
3月は神奈川からのナースでしたがもともとは東北出身ということで、冬道は慣れたもの。安心しました。
お二人とも日頃は急性期病棟の中で緩和ケアを行っている方々なのですが、当院の印象を尋ねると
「ドクターや他職種とのカンファレンスで、みんなが対等に話し合っていることに驚いた」
「ドクターと情報共有ができているので、患者さんへの対応が早い」
「廊下で会う職員がみんな親切で心地よい」
という感想をいただきました。

1週間という期間はあっという間ですけれど、途中ホームケアクリニックで在宅ホスピスも見学し、ちょっぴり札幌観光もできて、充実していたのではないかと思います。

当院からもキャリアアップ研修に誰か行かないかな~と思っています。
百聞は一見にしかず、ですからね!

今日もこのブログをお読みいただきありがとうございます。
グループ病院以外からも広く見学者を受け入れていますので、希望があればご相談ください。

年度末評価、やってるところです。

早いもので今年ももう3月になりました。
年度末ということもあって、目標を達成したかの評価や新年度の計画を立てる時期でもあり何かとあわただしい毎日です。

看護部でも各委員会・各部署の評価を話し合っているところです。
小さな病院なのでさまざまな決め事は、たいがい小回りよく進みますが、物事によっては年単位で時間のかかることもあれば、思っていたよりもぐんと伸びしろを大きく進むこともあります。
たとえば患者さんのベッド周りをもっと整理整頓して、処置のために医療者が使う物品をコンパクトにまとめようという意図があって、看護部感染予防の委員会がそれに着手しました。
PPE(personal protective equipment:個人用防護具の意味)ホルダーという、手袋やマスク、ビニールエプロンなど看護者が日常的に使う備品を、以前は患者さんの床頭台に置いていたのを、お部屋の入口に設置することにしました。病室に入る際に装着していける利便性と感染制御の機能性、一か所に集約できるため無駄が省けること、患者さんのスペースを本来の目的で使うこと、見た目にすっきりすることなどが目的です。

これがPPEホルダー

看護師が使うものは専用台にひとまとめ

しかし看護師たちのこれまでの動線を変えることになりますし、ホルダー自体それなりの値段がします。
値段を調べ、どこに設置するかを数え、全ての部署が一斉に開始できるようにと委員長が腐心しました。
そして各部署にいる委員たちが、ベッド周りの点検・整備をしてくれているので、ほぼ1年かけておおむね当初の目的が達成されるようになりました。

院内全体の委員長(田村先生)からも「この1年でずいぶんよくなったよ。ベッド周りがすっきりした。」とお褒めの言葉をいただき、気をよくしているところです。

もうひとつ、昨年途中から新たにできた「認知症ケア委員会」。
診療報酬の改定によって、認知症ケアの充実を目的として立ち上げた委員会ですが、各部署の委員とドクター・医事課など他職種が集まって月に一度会議をしています。
電子カルテ上のシステムを整え、対応マニュアルを作り、勉強会などを開くほか、現在は各部署で対応に苦慮する患者さんを、ケース・カンファレンスで共有しあって、どんな対応が望ましいか話し合いラウンド(巡回)し始めたところです。


半年足らずでここまで活動の幅が広がるとは、私も予想外でした。
これも毎月の会議の内容を緻密に考え準備してくれる人がいるおかげ。
そして認知症ケアについては「ふくじゅそう外来」を開いている、田村先生がいることが当院の大きな強みになっています。

どちらも田村先生が委員長の委員会デシタ(^^)。
そしてどちらも「なされるべきは何か」を考えて行動する委員会です。
成果を上げるのは、こういうことなんだなあ。

 

今日もこのブログをお読みいただきありがとうございます。
まだまだやることいっぱいです。