病は市に出せ
「問題は小さなうちに対処したほうがいい。様子を見よう、なんて言ってると膨れ上がって対処できないほど深刻になるから」
昔お世話になった上司から教わったことです。
職場のマネジメントに携わるようになってから、この言葉をよく思い出します。
様子をみていて大問題になった経験もありますし、問題とも感じてなかったところから突然大火が発生したこともあります。
昨年「病は市に出せ」という言葉を知りました。
徳島県の旧海部町(現海陽町)で古くから言われてきた格言だそうです。
ここは日本で最も自殺率の低い地域ということで、数年にわたり環境や健康などが調査されました。
他の地域と比べて特に目立った違いはないのですが、地元住民に聴き取り調査をして浮かびあがってきたのは5つの自殺予防因子でした。
それは、濃すぎない緩やかな人間関係、多様な価値観の尊重、固定化されない人への評価、自己肯定感の醸成、助けを求めていい環境、です。(2021.10.21北海道新聞・朝の食卓より)
また江戸時代発祥の「みせ造り」という縁台付きの住宅が並んでいて、生活空間を歩くだけで住民が始終会うので、会うたびに「困りごとを小出しにする習慣がある」のだそうです。
この記事を読んでから、問題が小さいうちに対処するのも、一人一人の悩みが小さいうちに出すのも、切り取り方がちがうだけで本質は同じだなと思ったのです。
「こんなことぐらい」「はずかしい」と思わずに気安く誰かに言えると、それだけで気持ちが楽になることもありますし、「そんなことで悩んでいたの?」「だいじょうぶだよ」と手を差し出してくれたら、悩みも軽くなることでしょう。
これを言わずに限界まで我慢していると、周りが知らないうちにとても深刻な病に陥っていることもあるのです。
大事なのは悩みを出しやすい環境になっているか、悩みを聞いた方が一緒に考え行動しようとしているかどうか、じゃないかと思います。
私がこの病院に来る前に、前野総長から言われました。
「僕たちはどんな小さなこともよく話しあう。だから孤独にはならないよ」と。
着任して驚いたのは、多職種の人に聴く姿勢と多様な価値観を受け入れようとする姿勢が定着していたことでした。
よそ者だった私もここへ来て早7年になりますが、今でもとにかくよくしゃべり、よく聞きあう職場だなと思います。
今日もこのブログに来てくださりありがとうございます。
行ってみたいなあ。海陽町。