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看護部からのお知らせ

夜更けの事情

毎晩夜中の3時頃になると起きだして、ベッドの横にある床頭台(”しょうとうだい”と言います。引出の付いた物入れのこと)に入っているものを、出してはしまい、しまっては出す、を繰り返しているのは76歳のS子さん。

大部屋なので他の方が物音で目を覚ましてしまい、ついにうるさいと苦情を言われてしまいました。

当直の時に観察していると、確かに3時になると起きてベッドサイドにかがみこみ、戸をあけて中に入っている着替えの包みや洗面道具を出したりしまったり。
腰椎が折れて、入院した時には痛みで動けなかったとは思えない屈み方です。

看護師がやんわり止めようとする声は耳に入りません。
眼はぱっちりしているけれど、視点がここにないのです。
今なら「せん妄だね」と理解できるのですが。

「30分くらいでぴったり止めて、いつのまにかまた寝るんです」と受持ちナース。

後日ご家族に聴いてみましたら、ご自宅でコンビニを経営されていて、夜中の3時ころにお弁当が届くそうなのです。
息子さん夫婦が夜ぐっすり休めるようにとS子さんが夜中に起きて、工場から届くお弁当を受け取り、お店の食品棚に陳列するところまでを毎日の日課にしていたのだとか。
腰の骨が折れて入院しても習慣が消えずに続いていたんですね。
その様子を聞いて、息子さんが涙ぐみました。

数日後、痛みが落ち着いているということで、S子さんはご自宅に帰って行かれました。
約20年前の話ですが時々思い出すのです。