テンプレートにない質問
私どもの病院には様々な研修生が来られます。
研修医・看護師・薬剤師・ソーシャルワーカー、それらの学生さん、中高生。
緩和ケアを学びに来る方が多いのですが、皆さん一様に驚かれることが2つありまして、一つはカンファレンスでもうひとつは入院時に患者さんとご家族にお話を伺う面談「インテーク」についてです。
このインテーク、私も初めて同席した時はおどろきました。
入院してベッド周りのお荷物が片付く頃、患者さんとご家族、医師、看護師、ソーシャルワーカーが面談室に集って、これまでの病気の経過から様々な質問をして確認させて頂きます。
これからのケアの主要な人が揃っているということがこの場合重要です。
病気をどう受け止めているか、今つらいと思うことは何か、これから何を期待しているか、気にかかっていることは何か、叶えたいと思っていることは何か、など質問は病気のことから人生観についてまで多岐に渡り、その方まるごとの振り返りにもつながっていきます。
こうしたお話を聴かせていただくには、それなりにまとまった時間と、質問力も必要です。入院したその日に、これらをお聞きして関係者で共有することで、そこにいる全員が患者さんの思いを共有する大事な時間となり、「私のことはわかってもらえている」と安心してもらえるのです。
私は長く看護師をしていますが、ここへくるまで患者さんから入院時にお話を伺うのは(アナムネーゼを取ると言っていました)、看護師一人でしていました。
医師は医師で、ソーシャルワーカーはソーシャルワーカーで、それぞれに自分が聞きたいことだけを聞いておりました。
だから、患者さんにとっては、何度も同じことを話していると思われたと思います。
あとはそれらの情報をどのように共有するかにかかっていると思いますが・・。
同じ情報でも言い方が微妙に違ったり、受け止める相手によっては同じ話でもニュアンスが違って受け取られることもありましょうから、全員が同じ時間に集うのはその辺りの温度を共有することにもなるでしょう。また、気持ちは常に変化していくものなので、最初は「それでいい」と思っていたことが「やっぱり本当はこうしたかった」という風に変わる場合もあるので、だからこそ最初に複数で聞きあうことが大事だとも言えます。
患者さんは「こんなに私の話をじっくりと聞いてもらったのは初めてだ」とおっしゃったり、「(患者が)あんな風に考えていたなんて知らなかったです」とご家族が患者さんの本心に触れたりすることもあります。
怖くて聞きたくても聞けなかったようなことが医療者と共に聞けて、家族関係が一歩進むような場面に立ち会うこともあります。
さて、最近研修を終えたドクターが、最後の日に朝礼で感想を述べられました。
その中で私が印象的だったのは
「テンプレートにない質問によって、患者さんの病気だけじゃなく人柄に触れたことが大きかったです。」
ということばでした。
そうそう、今はもうどこの病院も電子カルテですから、質問すべき項目というのはテンプレートに一応入ってはいるのですが、それを埋めることを目的としたら、そこにない項目は聞かなくていいことになってしまう。
人に関心を寄せて理解しようと思ったら、患者さんの答えの中に次の質問があるのです。
そこを感じてもらえて嬉しいです。
今日もこのブログに来ていただきありがとうございます。
研修生の瑞々しい感性が好きだなぁ。