セクショナリズムの端緒を摘み取る
これは入院している患者さんが別の病棟に移るときの話。
A病棟とB病棟の看護師が患者さんについての申し送り(引き継ぎ)をします。
A病棟看護師は「こういう治療を受けて今はこんな様子です。そちらの病棟で引き続きこれこれのケアを継続してください」というような話をします。
病態が複雑だと長くなりますが、だいたい5〜10分程度かかります。
B病棟の看護師はそれを聞き取り、わからない点を確認し、その後患者さんはB病棟へと移っていきます。
その申し送りの場面で、B病棟の看護師さんがとても感じが悪かった。
受け答えが粗雑でなんだかイライラしているみたい。
質問もつんけんしていて、嫌な感じ。
A病棟の看護師はそんな人に大事な患者さんを預けるのが嫌だなと思いました。
その様子を見ていた先輩ナースは「B病棟の○○看護師感じわるい~」と師長に報告しました。
そして「うちのかわいい後輩ナースに対してあの態度はないわ!」と立腹しています。
他の先輩ナースも話を聴きつけ一緒になって同調し始めました。
師長は申し送りをしたナースから話を聞きました。
普段その看護師はとても感じがよく、挨拶もちゃんとしているので、そんなはずはないと師長は思いました。
そして「なにか事情があるかも知れないから、一度のことでそう大騒ぎするもんじゃない」とみんなをたしなめました。
その後、感じが悪いと言われた看護師さんは、自分のお子さんが保育園で初めて熱を出していたので、早退する前に仕事を早く終わらせなければと焦っていたことがわかりました。
プロである以上、私生活が仕事に影響するようではもちろん困るのですが、同情できる部分もあったわけです。
私はその一連の話を聴いて、師長さんがセクショナリズムの端緒をしっかり掴まえたなと思いました。
放っておけば「B病棟の○○看護師」は「感じ悪い」というレッテルが張られたことでしょう。
さらには「前にもそういうことがあった」「△△看護師もそうだった」「B病棟はいつも感じが悪い」と悪いところ探しに発展することがあります。
悪評はそのうち独り歩きをして固定化する危険性をはらんでいます。
A病棟とB病棟は専門性も役割も違いますが、いがみ合うことは何の益ももたらさない。
かえって不要なエネルギーを使わせてしまう。
こういうことは案外至る所で起きるから、芽が小さいうちに摘み取らないとあとあと大きくなってからだと始末に悪い。
アンテナを張りスタッフの声に耳を傾け、正しき方向へ向かうように促す。
まるでトマトの脇芽のようですね。
今日もこのブログに来ていただきありがとうございます。
あ、これは人から聞いた、よその病院の話。