30秒の家族ケア
もう年度が替わってしまったのですが、3月に看護部教育委員会で計画した「家族ケア」の講義がありました。29年度はこの「家族ケア」とグリーフケア委員会で企画した「グリーフケア」の研修とがぴったりマッチして、看護者がどのようにご家族を支えるかを看護師側とご家族の声から聴くことができました。
看護師が看護師になる理由の中には家族や親しい人の、病気にまつわる体験をきっかけにしていることがよくあります。「家族ケア」で講義をしてくれたナースQさんも、お母様の旅立ちのプロセスに家族ケアの物語がありました。
Qさんは入院していたお母様に対し、看護師でありながら今一歩近づけない、体に触れられない気持ちでいました。
患者さんだったらなんということもない行為も、家族であるがゆえに手が出せない気持ちだったのです。
そして危篤のお母様をそばで見守りながら、何もできない自分を責めていました。固い椅子に座って夜通し付き添った朝方、看護補助者の方が顔を拭くための熱いタオルを一本Qさんに手渡しました。
「ほれ、お母さんの顔、拭いてやんな」と一言声をかけられて、彼女は突き動かされるようにそのタオルでお母様の顔を拭くことができたのです。
Qさんは「今考えると初対面の家族に、”ほれ”はないだろうと思います。けれども私にはあのときの補助者の方が、”この娘さんは一晩中母親に付き添っているけれども、何もできないでいるんだな。きっかけがあれば何かできたと思うかな”、と一瞬で見抜いたんじゃないかと思います」と話しました。
この補助者の方がそこまで鋭い視点を持っていたかどうかはわかりませんが、とにかくQさんはその人の一言に救われ、行動ができたのですね。それが30秒の家族ケアだったと彼女は話してくれました。
「さあ家族ケアをしましょう」という構えではなく、日常の中の様々な場面に家族ケアのチャンスはあると語っているのです。
本年度の教育委員会もこの「家族ケア」を引き続きやっていこうということになりました。
「うちの病院だからこそ、ここは大事にしていきたいよね。こういう話は何回聴いてもいいよね」というコトバが教育委員の中から出たのが私にはうれしいことでした。
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関心を寄せることなんだよな~。