みなさん、こんにちは。ご無沙汰院長ブログに来ていただきありがとうございます。
今日の表題は何?と思った方がいるかもしれませんが、今週の水曜日の医療講演のテーマでした。
昨年は、当院の医療講演は毎月看護師たちが自分の得意なことを順番で持ち回りで行い、好評でした。
そこで、今年はと地域医療室の人が考えたのが、大きなテーマに沿って各職種が話すことでした。
あるテーマに関して、医師や看護師、コ・メディカルの立場から話してみようという企画になりました。
その第一弾が、『病院でお話する終活』というテーマでした。
まずトップバッターとして私が昨日お話をさせてもらいました。
地域医療室の人としては、今回は宣伝に力を入れました。いつものように北海道新聞の折り込みチラシ
を入れるだけでなく、地域の町内会の回覧板にも入れてもらい、そして北海道新聞の地域の紙面にお知
らせコラムを入れてもらったのでした。
この効果は絶大でした。昨日は13時から講演の予定だったのですが、12時10分過ぎにはもうすでに当院の
4階講義室に人が入り始めました。どちらから来られましたか?と聞いてみると、なんと東区!(当院は
清田区の外れにあります。札幌在住でない方がこのブログを読んでいると考え説明しますと、ちょっと
距離が遠くて通常は来院されません。ですからビックリなんです。)
その後も続々と人が集まり、当初用意していたテーブルと椅子では足りなくなり、追加の椅子を出すこと
になりました。医療講演開始の10分前にはもうすでに一杯になり、お待たせするのも悪いと思い、講演
前の前座として(サービスとして)私の漫談もさせてもらいました。
ちょっとリラックスをして13時から本題の講演をさせてもらいました。
以下は話した内容の抜粋です。(講演を聴かれなかった方にも考えてほしいことです)
最近、「終活、終活」と世間一般で言われていますが主に遺言書の作成や亡くなった後の葬儀やお墓の
事、財産などの事などエンディングノートを記入したりして、目的は自分が亡くなった後、家族にかかる
負担を減らすことが目的になっています。
しかし、突然命に関わることが起きたとき、どうするかを皆さんは話し合っているでしょうか?例えば、
急に病気で倒れて救急車で病院に運ばれて、救命に一刻を争う状況。また、病気で何度も入退院を繰り
返していて、今度も退院できると思っていたら、もう退院はできませんし命も長くありませんと言われ
た。また、自分の力ではもう食べれることができませんと言われた。そんな時・・・。
テーマは『あなたの人生の最期は誰が決めますか?』ですが、病気や年齢を重ねることにより今までの
生活が続けられないことが突然起こる。また入院した時、症状によって延命治療のついて確認される
ことがあるが、本人はもちろんご家族もそんなことを考えたことがないことが多いのです。
特に本人がもう意識が無い状態などに、家族が急に大事な選択をしなくてならなくなる状況となり、
大変な重圧がかかってしまうことがあるのです。
少し前の医療現場では、救急車で運ばれてきた患者さんはまず最初に救命を行います。その処置で心臓は
動き始めすぐに入院することになります。家族はどうしたらいいか分からず、医師から言われるとおり
に任せるしかありませんでした。
結果として、例えば人工呼吸器がついた延命処置を続ける患者さんが病院にあふれるようになってしま
いました。意識は戻らないままの状態です。本当は本人はこのような延命治療は望んでいなかったことが
後で分かることがあっても、これ以上どうしようもなかったことが続きました。
そういうことを防ごうとする努力は以前からありました。いわゆる事前指示書です。将来、自分の意思が
無いときに自分に行われる医療行為を事前に意思表示をしておくことでした。例えば、点滴を希望する/
しない、胃瘻を希望する/しないなどの医療行為を事前に決めておくことでした。
しかし、米国で大規模な介入研究を行ったところ(なんと9000人!)、入院前にすべての患者さんに
事前指示書を書いてもらったのですが、結局本人の意思がそのことで尊重されたか、延命治療の機会が
減ったか、費用は減ったか、苦痛症状が減ったかなどを評価したが、まったく効果無かったという結果
が出たのでした。つまり、事前指示書を書いたところで効果はないという結論だったのです。
それで、次に考えられたのがアドバンス・ケア・プランニングというものでした。『将来の意思決定能力
の低下に備え、事前に今後の治療・ケア、代理決定者などについて、本人・家族・医療者みんなで話し
合っておくプロセス』のことです。
単なる相談や事前指示書を作成しても、終末期には患者本人の意向を尊重できないので、関係者が
プロセスを大事にして話し合いすることが重要だということで世界的にも認識されていることです。
講演では、そのアドバンス・ケア・プロセスのいいところを一通り話しました。
そして、厚労省が出している『人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイド
ライン』もまさにアドバンス・ケア・プロセスそのものなのでした。
ただ、厚労省としてはこの言葉が英語のため普及しにくいと考えたのか、昨年11月に愛称を募集し
『人生会議』という名称に決まりました。
以上の話をして、最後にあなたの人生の最期をだれが決めるかを親しい人で話し合うことを勧め、家に
帰ったら是非人生会議をしましょうと話して、今日の講演を終えました。
最後は会場からの質問を受け、予定の1時間をオーバーして終了。たくさんの方に聞いてもらい大変
良かったと思いました。
次回は、看護師・棟方さんからの講演です。楽しみにしてくださいね。