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日本医療機能評価機構認定医療機関

WEBセミナーホスピスのこころ

第13回「緩和ケアとリハビリテーション」

がんのリハビリテーションは病期によって大きく4つの段階(予防的、回復的、維持的、緩和的)に分類されています。予防的リハビリというのは、がんと診断された後の早期に開始されるもので、運動機能の障害はなくてもその予防を目的に行われるものを指します。回復的リハビリというのは、がんの治療が開始された後に、運動機能障害や日常生活能力の低下が存在する患者さんに対して最大限の機能回復を目指して行われるものを指します。維持的リハビリというのは、がんの進行とともに運動機能障害が悪化しつつある患者さんのセルフケア、運動能力を維持・改善することを目的とするものです。そして、緩和的リハビリというのは、末期がんの患者さんに対してその要望を尊重しながら身体的・精神的・社会的にも質の高い生活を送れるように援助することをいいます。

世界保健機関(WHO)による「緩和ケア」の2002年の定義によれば、緩和ケアの対象となるのは末期に限らず、疾患の早期からを対象としていますので、「緩和ケア」と「緩和的リハビリテーション」では対象となる患者さんは完全に一致するわけではありません。

当院では終末期のがん患者さんに対してリハビリテーションを実施しております。先ほどの分類でいえば維持的リハビリ~緩和的リハビリに相当します。

維持的リハビリ~緩和的リハビリにおいては、患者さんの希望を最優先に考えて、生活の質(Quality of life:QOL)が高い状態で過ごせる事を目指しています。実際に実施されるリハビリテーションの内容は患者さんの病状や希望によって様々ですが、維持的リハビリの時期であれば、患者さんに残されている潜在的な能力を引き出し、日常生活能力を維持・改善できるように筋力訓練や動作練習、歩行練習などを実施すると同時に、安楽な動作方法の指導や福祉用具の提案などを行い、患者さんが持っている希望を実現できる事を目指します。緩和ケア病棟に入院される患者さんの多くが「寝たきりになること」や「歩けなくなること」への不安を持っていらっしゃいます。そのため維持的リハビリにより日常生活動作を自分で行える期間をできるだけ延ばしていくように援助することは患者さんの希望を支えることにもなります。しかしながら、がんの病状進行とともに徐々に日常生活能力は低下し、ベッド上で過ごす時間が増えていくことは避けられません。そのような状況になった際には緩和的リハビリへと目的・内容を修正していきます。緩和的リハビリではベッド上でのストレッチやマッサージなどを行い、身体を動かせないことによって生じる痛みやだるさといった身体的苦痛の軽減を目指します。また、患者さんのお話に耳を傾けたり、病室での趣味的活動を一緒に行ったりすることで、達成感や満足感を高め、精神的苦痛を和らげることを目指します。緩和的リハビリにはまだ治療が続けられているという精神的援助の役割もあり、その事によっても生活の質(Quality of life:QOL)を高める事を目指しています。

理学療法士 花田 健彦