「平穏死」のすすめ

最近、表題の本を読んだ。筆者は東京都世田谷区にある特別養護老人ホーム(いわゆる特老)
につとめる管理医の医者が見た現在の介護施設にいる終末期にある老人たちの現状である。
そこに勤める前までは、一外科医として患者さんの治療にあたっていたが、自分が治療した人たち
が最期にこのようになっていることに愕然としたとのこと。意識もなく、口から食べられなくなった
人たちに胃瘻が作られていることや、もし状態が悪くなったらすぐに病院へと送られてしまうことなど。
本人や家族は終の棲家としてここ(特老)を選んだのに、最期に状態が悪くなったら結局病院に
送られているという現実など、今、全国のどこの介護施設でもあり得る現状を正直に伝えている。

詳しい内容は是非読まれたらいいと思うが、特に印象に残ったことは、口からものが食べられなくなった
ら、やはりそれは人として生きる力が無くなったとのこと。胃瘻を作ってまで、生きさせることに
意味をなさないことをいくつかの事例を挟みながら伝えていることである。私もホスピスで働く人間と
して、がんの終末期には必ず食べられなくなり、その時まで支えていくことが必要で、食べられないから
と言って、無理に点滴をしたり、ましてや胃瘻などは必要ないと考えており、その点に非常に共感した。
がんの終末期も高齢者がいずれ迎える最期も基本的には同じで、関わる時間の長さに差はできるが、
そこに対する姿勢や考え方は似ていると思った。「平穏死」というネーミングもなかなかだと
思った。
今から約20年前、山崎章郎先生が、「病院で死ぬということ」を書いて、病院での死の現状を明らか
にしたが、この本は現在の介護施設での死の現状を明らかにした画期的な本だと思った。
おすすめの本です。


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