ホスピスの遺族会(ひだまりの会)

先週の土曜日、ホスピスの遺族会(ひだまりの会)が開催されました。今年で12回目を数えます。
今年のホスピスの遺族会は平成27年4月から平成29年3月までの2年間で当院のホスピスで亡くなられた
方のご遺族に対して開催しました。9月と10月の2回開催することで、できるだけ多くの方が参加して
いただけるようにしています。
今回の10月は2回目の遺族会で、参加者は5家族7名の方でした。例年の中では少ない参加者でしたが、
全員でテーブルを囲んで丸くなったような形になり、皆さんの顔が見え、また声も十分届く距離で
いい感じとなりました。
ひとり一人に想い出などを語ってもらい、短い時間があっという間過ぎました。

その中で印象に残った言葉が二つありました。

今日のキーワード:
「あんさん」
「お父さん、お見事!」

どちらもご遺族から聞いたお話です。まず1つめは、『あんさん』
当院ホスピスで亡くなられた高齢の男性のお話です。数年前に当院の近くに奥さんと引っ越してきた
そうです。どうも体の具合が悪かったようですが病院にはずっと行かなかったようです。それでもようやく
病院に行って検査を受けたところ、末期の癌とわかったようです。それで、転院手続きをして当院の
ホスピスに移ってきました。痩せてはいましたが、まだ頑張ることが出来たので、ホスピスでの催し
物に参加したりして楽しんでいました。しかし、徐々に状態は悪化し、衰弱していったようです。
いよいよ厳しい状況になったことが、スタッフから奥さんに伝えられ、道外在住の息子さん二人が
駆けつけました。元々口数の少ないお父さんだったようで、あまり辛いとは言わなかったようです。
駆けつけた長男がお見舞いの合間に食事に外出するためにホスピスの部屋から出ようとしたとき、
ご本人から『あんさん』という言葉が出たようです。出身が東北地方の方で『あんさん』というのは、
お兄ちゃんを意味しているそうです。その言葉を聞いた長男さんもビックリして食事に出かけるのを
止めたそうです。
奥さんからの話では、ご本人は息子さん二人に手を握られ、静かに旅立ったとのことです。こんな
最期を迎えられて幸せな夫はいませんとのことでした。

2つめは、『お父さん、お見事!』
この方も男性です。実は私の担当の患者さんでした。がんという病気がわかり、治療するかどうか
迷っているときに私と関わることがあり、治療はせずに緩和ケアを選択して最期までしっかり生きた
方でした。経過中にも色々なエピソードがあり、それも印象深かった方でしたが、ご家族もご本人
を支えていました。この男性と奥さんと長男家族が同居されており、娘さん二人は関東在住という
状況でした。関東在住の娘さん達は交替で両親のお世話に札幌に来ておりました。
徐々に病気が進んでいる中、がんがとうとう脳にまで転移していることがわかり、自宅での療養は
難しいと判断しホスピス病棟に入院しました。比較的穏やかな日々が続きましたが、確実に病状は
悪くなりました。ご家族から最後に自宅に外出させたいという希望があり、亡くなる2日前でしたが、
車で出かけてきました。かなり体に負担にはなったかもしれませんが、ご本人もご家族も家に帰れた
ことに非常に満足していました。
その日からはこちらからの問いかけやご家族の声はわかったようですが、ご本人はほとんど話せ
なくなりました。
そうしていよいよ最期の時が近づく中、妻と娘さん二人が両手を握りながら本人に声をかけていた
そうです。3人でご本人の両腕の橈骨動脈を触りながら、まだ脈があるとか、少し弱くなったとか
話していたとのこと。そして徐々に脈が遅くなっていったのが、娘さんにもわかったようです。
呼吸も弱くなり、脈の間隔が延びて、そして脈が止まったそうです。そうしたら長女さんが、
『お父さん、お見事!』と叫んだそうです。妻は悲しい気持ちより、その言葉に思わず圧倒された
そうです。苦しまず、安らかな最期を妻と娘さんと3人で共有できたことが良かったと言っていました。

一人ひとり違った最期の迎え方があり、そのドラマに一旦を見させていただいた時間でした。

以上、ホスピスの遺族会の報告でした。


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