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2019年3月4日

認知症の事例検討会が楽しく終了しました。

M男さんは、看護師がおむつを替えようとすると腕を振り回して怒り、体に触らせてくれませんでした。
ご自分が病院にいることもおそらく分かっておらず、治療の説明はまったく耳に届いていません。
気に入らないことがあるとすぐ怒り出して手元にあるものを投げつけ、目をぎらぎらとさせて飛び掛からんばかりに威嚇するので、看護師はほとほと手を焼いていました。
ただ怒りがエネルギーを消費するせいか、食事の食べっぷりは見事です。
お膳を置くかおかないうちに器に入っているものをひとつずつ空にしていきます。
ごはんつぶ一つ残さずきれいに完食。
M男さんは看護師から絶賛されて、この時だけは笑顔になったのです。

今ならこの認知症は「前頭側頭葉型認知症(ピック病)」だとわかるのですが、20年位前はそういう分類はなかったので、看護師に殴り掛かる手を数人で押さえつけ、抑制して点滴をし、おむつを取り替え、夜は薬で眠ってもらうことが当たり前でした。
体に起きている病気を治療するために、認知症が治療しづらくさせている側面があったのです。

今は認知症に対する対応の仕方も変わり、その人の生活環境を整えることで穏やかに過ごせるようになることがわかってきています。
ただ看護師だけではやっぱり情報も対応も足りないので、MSWから生活背景を教えてもらったり、看護補助者の方が生活習慣をよく知っていたりするので、それらの情報をまとめつつ、心地よかったことは何か、を探し続けていく必要があるのです。

先日行われた認知症事例検討会には、病院の向かいにある高齢者施設職員やケアマネージャーが参加してくれて、興味深い話し合いになりました。

お家では朝遅く起きるので、朝ご飯を食べないという人にとっては、病院の日課で朝早く起こされ、朝ご飯を強要されるのは不愉快なことでしょう。
当然、不機嫌になり食事は拒絶の態度につながります。
ごはんは一日2食でいいというなら、それでいいのです。
病院の看護師は病院の日課が身に沁みついていますので、3食食べていただくことが当たり前と思いがちです。
しかし看護師自身も休みの日に、ゆっくり朝寝坊して朝昼兼用のごはん、ということはよくあることです。
ここに「病院の中の正しい生活」と患者さんの日常のズレがあるのです。

よく「患者さんの気持ちを尊重して」ということが言われますが、「病院の中の正しい生活」という価値観を一度立ち止まって考える必要があるでしょう。
自分や家族の身に置き換えるとわかることも、多職種の意見を聴くことで、腑に落ちるものです。
大事なのは行ったケアを振り返って、もっといい対応はなかったか、その人に適切な環境だったかを問い続けることなのです。

今日もこのブログに来ていただきありがとうございます。
私が認知症になるのなら・・・と考えても仕方ないな。