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2017年7月18日

私の終末期はこうしてほしい~医療事前指示書について

7月15日北星学園大学で開催された、日本在宅ケア学会学術集会の市民講座に行ってきました。
尊敬するスーディ神崎和代先生(いわき明星大学教授)が「最期まで安心して暮らすための在宅ケア」という題名で講演し、先生の書かれた「医療事前指示書」について書き方を解説されるというので、楽しみにして行きました。

「終活」とか「エンディング・ノート」など、人生の終い方についての本やイベントが流行しています。
遺言書やエンディングノートはいわば「亡くなってからの」指示書ですが、この医療事前指示書はもっとその前の段階での指示書になります。
実を言うと私も32歳の時からいわゆる「遺言書」を毎年書いていました(^^ゞ
ま、その話は別の機会にするとして。

「医療事前指示書」とは、何らかの理由で自分で自分自身の医療に関する意思決定ができない事態に備えて、あらかじめそれを文書にして書き記し、書いたことを誰かに知らせて託すことまで、を指すものです。

私たちは事故や病気などで急に重篤な状態に陥ったり、あるいは徐々に進行する認知症のために、自らの治療について「こうしてください」とか「不必要な延命治療は要りません」という意思を、人に言えなくなることがあります。
そのとき医療者はご家族の方に「(このあとの治療を)どうしますか?」と尋ねることになります。
命に係わる重要な意思決定を迫られたご家族は、迷い、悩まれます。
生きて、元の姿に戻ってほしいと願い、意思決定をされるのです。

今はインターネットで様々な医療の情報を得ることが出来るようになりましたので、患者さんの選択の幅も広がりました。
人工呼吸器や胃瘻の装着、過剰な医療の拒否についても、あらかじめご本人が意思決定されたものとわかるなら、ご家族も迷いなく選択できるでしょう。

医療事前指示書にはもうひとつ、「医療委任状」という側面もあります。
「最期を迎えたい場所」について国民の55%が「自宅で死にたいと思っている」が、実際に自宅で亡くなる人約12%、病院で死亡する人75.2%という調査結果があります。(厚生労働省平成28年資料「在宅医療の現状」から)
つまり、実際には終末期を自宅で過ごしたいという希望はあっても伝えていない人、希望する在宅医療サービスがその地域で受けられない人、家族の介護負担などで思うとおりに行かない人などがたくさんいるということです。

病気や寿命をコントロールすることはむずかしいですが、回復の見込みがないとわかったときに、「自分はこうしてほしい」とあらかじめ書いた意思を表明し、伝え、尊重してもらうことは可能です。
そして内容についてご家族とよく話し合っておいて、書いた指示書をどこに保管したかを家族がわかっていることが大事です。
「お父さん、こう言っていたよね。そういえばあの棚の引き出しに入れておいたね」と言っていつでも取り出して見ることができれば、それはご本人に代わって家族が意思を尊重することにつながるのです。

 

医療事前指示書について
http://www.nakanishiya.co.jp/book/b217333.html

 

今日もこのブログに来ていただきありがとうございます。
この件についてはまた書きたいと思っています。